皆さん、突然ですが、タイアップと協賛の違いって分かりますか?
何となく、分かっているような気もしますが、改めて説明して欲しいって言われると少し困ってしまうかもしれません。漠然とですが、夏や秋など、イベントが多くなるシーズンになるとタイアップって増えるようなイメージがあるのに対して、協賛っていうのは季節に関係なく存在している感じですよね。
さて、今回は、タイアップと協賛の違いを理解したうえで、いかに効果的にマーケティングに活用するか、そして、これからの流れとしてどういったポイントを抑えれば良いのか、について話を進めていきたいと思います。
タイアップとは?
タイアップは英語ではtie−upと示され、もともとの意味は「関わり、結びつき」です。そこから派生して(会社の)提携、合併などの意味を持つようになりました。従って、基本的には提携することを指し、マーケティング的には2つ以上のブランドや企業が提携して共同のプロジェクトやキャンペーンを行うことを意味します。それでは、具体的にはどんな例があるのか見ていきましょう。
タイアップ商品/コンテンツ
商品のタイアップとしては例えば、飲料メーカーが京都の老舗お茶屋さんと組んで、共同で商品開発した例などは分かりやすいかもしれません。また、例えば人気のアニメキャラクターなどを起用して認知度を上げ、キャンペーンを行うというのもよく見る手法です。
メディアタイアップ
メディアタイアップは「タイアップ広告」や「記事広告」とも言われますが、基本的にはメディアに広告主がお金を支払い、そのメディアに記事を書いてもらったり、場合によってはテレビCMを制作してもらったりするなどして、メディアが持つ制作の力などをうまく活用して広告とする手法です。
気を付けておかなくてはならないのは、これはあくまで「広告」であって、純粋な記事や報道と区分けをして消費者に「広告」ということが分かるように明記しなければなりません。
この狭間を狙った手法として、お金をもらいながらも広告とは思わせずに、口コミなどで高く評価することをステルスマーケティングなどと呼びますが、2023年3月に消費者庁が景品表示法の不当表示として禁止行為に指定したと告示しました。
タイアップ企画
上記のような分かりやすい例以外にもタイアップ広告はまだまだたくさんあります。タイアップは通常、異なる業界や分野の企業が連携し、お互いのブランド価値や知名度を高めることを目的として行われるため、例えば、子供たちにもっと自社の飛行機に乗ってもらいたいと思っているエアラインが、アニメキャラクターとコラボをしたり、人気の映画の公開に合わせて、その映画のキャラクターをペイントしたジェット機を飛ばしているような例にも表れています。
いずれにしても、タイアップは、自分にはない機能を相手が持つ機能やブランド力で補完して、互いの価値を高めるという目的があるので、その掛け算は二つでなされるものだけではなく、3つ以上のものが掛け合わされることもよくあります。そういう意味では、まだまだ新しい可能性を広げられる分野になります。
[Tips]
・タイアップは、2つ以上のブランドや企業が提携して共同のプロジェクトやキャンペーンを行うことを意味する
・その種類としてはタイアップ商品/コンテンツ、メディアタイアップ、タイアップ企画があり、3つ以上のものが掛け合わされることもよくある
協賛とは?
協賛は英語でSponsorshipというのが一般的ですが、他にはcooperationやco−sponsorshipという言葉が使われることもあります。例えば、あるイベントやプロジェクトに資金やリソースを提供する企業や団体を主に協賛社と呼び、協賛を受ける側は、提供された協賛金などの支援を活用してイベントやプロジェクトを遂行し、協賛社はその活動やイベントの宣伝や広告をする権利を持つ(併せて、活動やイベントを通して自社の宣伝をすることができる)関係になります。
また、一般的に民放のテレビ番組では、その番組を制作する資金をスポンサーによって集めており、番組の最後には「この番組はご覧のスポンサーの提供でお送りしました」などと読み上げられています。それでは、具体的にはどんな例があるのか見ていきましょう。
冠協賛
冠協賛はそのイベントや番組などで見込む協賛社からの収入のすべて、もしくはかなり多くの割合を1社が支える協賛方法で、一般的にはイベントや番組タイトルそのものにスポンサー名がつきます。例えば、プロスポーツのリーグそのもののタイトルに協賛者名が含まれていたり、テレビ番組などでもタイトルの前にスポンサー名が入るものを見たことがあると思います。テレビの場合は協賛ではなく、提供、というのが一般的ですが、考え方としてはイベントなどと同じで、その番組を作る制作費の多くが冠提供するスポンサーによって負担されています。
VIK協賛
VIKとはValue in Kindの頭文字を取ったもので、物品やサービスにより価値を提供する協賛のことを指します。例えば、夏の音楽フェスなど、熱中症対策などのことを考えるとスタッフや出演者に配る飲料が必要になってきます。また、スポーツ大会では、例えば球技だとボールが必ず必要になります。そのニーズに対応できる会社が現物、つまりVIKで協賛をしていることがあります。こうした場合、現金での協賛ではないため、価値換算額をあらかじめ計算して、契約することが一般的です。
通常協賛
上記以外の多くが基本的には通常協賛となります。シンプルに言うと、イベントなどを開催するための資金を協賛社が出し、その対価として、協賛社はそのイベントに関する権利を手にする、というものになります。ここで気を付けなければならないのは寄付との違いです。寄付は対価を求めない、ということが基本です。会計処理上も協賛金と寄付金ではその処理の仕方が異なる場合が多いので、注意が必要です。
[Tips]
・協賛において、協賛を受ける側は、提供された協賛金などの支援を活用してイベントやプロジェクトを遂行し、協賛社はその活動やイベントの宣伝や広告をする権利を持つ(併せて、自社の宣伝をすることができる)
・協賛の種類として、冠協賛、VIK協賛、通常協賛がある
タイアップと協賛、それぞれの違いと、どんな場面で使うのが効果的か?
ここまでタイアップと協賛を説明してきました。繰り返しになりますが、タイアップが2つ以上のブランドや企業が提携して共同のプロジェクトやキャンペーンを行うことを指し、協賛は、イベントなどを支援するための資金を協賛社が出し、その対価として、そのイベントに関する権利を協賛社が手にする、ということになります。
他にも特徴があり、タイアップは短期的なものが多いのに対し、協賛は長期的な関係性になるものが多いです。また、タイアップは同じくらいの価値を持つものが互いに対等に協力し合うという組み方が多いのに対し、協賛は明確に協賛社と協賛を受ける側、ということで立ち位置が違っていることが多いです。
従って、使う場面としては、短期的にキャンペーンを行う、などの場面ではタイアップが馴染みますし、長期的なブランド構築なども含めた協力関係を打ち出していく、という場面では協賛が適している傾向があります。
いずれにしても、世の中にたくさんのイベントやコンテンツ、ブランド、番組などがある中で、どう最適なものを選んで、その会社に応じた課題解決に繋げていくかを判断するのは、至難の業です。
そんな中、広告会社というのはある意味、非常に多くのステークホルダーと繋がっているため、マッチング会社としても機能します。
分かりやすいところで言うとタレントのブッキングもそうですし、タイアップ曲の選定、プロモーションとしてどうメディアを使っていくか、などなど、広告会社の非常に重要な機能の一つにマッチングを的確に成立させる、という機能があります。
[Tips]
・タイアップは同じくらいの価値を持つものが互いに対等に協力し合うという組み方が多いのに対し、協賛は明確に協賛社と協賛を受ける側、ということで立ち位置が違っていることが多い
・広告会社は非常に多くのステークホルダーと繋がっているため、タイアップや協賛の時に、マッチング会社として機能している
世の中の流れと、これからどういったポイントを抑えていけば良いのか?
これから重要なのは、自分たちの課題をわかっているか、ということです。分かっていればその課題を踏まえて、どういう提案が欲しいのか、という問いを立てることができます。ChatGPTに代表されるように、生成AIが進化した時に、これからの私たちはますます自分たちでいかに問いを立てられるか、ということが勝負になってきます。このポイントを抑えたうえで、課題解決の一つの手段として、どのコンテンツやメディアとタイアップするのか、どういったところに協賛をするのかを検討していくことが大変重要になります。
また、一緒に組むタイアップや協賛の相手が、後に何か問題を抱えていることが分かってしまうと大変です。事前にしっかりとコミュニケーションを取って、見極めていくということが今ほど大事な時代はありません。
是非、この2点に気を付けながら、うまく自分たちの価値を高め、そして相手の価値を高めるようなタイアップや協賛を考えてみてください!
[Tips]
・重要なのは、自分たちの課題をわかっているか
・一緒に組むタイアップや協賛の相手が、後に何か問題を抱えていることが分かってしまうと大変なので、事前にしっかりとコミュニケーションを取って、見極めていく
まとめ
タイアップと協賛、似ているようで、実は少し違いがあることを分かって頂けたでしょうか?
ただ、とても重要なのは、タイアップでも、協賛でも、組む相手が一方的に引っ張っていってくれるわけではなく、お互いが価値を発揮して、相乗効果として高め合う関係であるということです。特に、商品やサービスそのものを差別化するのが難しくなってきたときに、その会社が持つ考え方や価値観がいかに消費者に共感されるか、ということが重要になっています。そういう意味でも、互いに共鳴し合えるパートナーを見つけて手を組んで相乗効果を発揮するということは、とても重要なのではないでしょうか。