マス広告とは 「大衆」にアピールする広告
マス広告とは「大衆(Mass)」にアピールするための広告のことです。具体例として、以下の4種類(4大マス広告)が挙げられます。
それぞれの具体的な内容については、後述します。
マス広告全体の特徴は、不特定多数の人に商品やサービスの宣伝ができる点です。ただし、各媒体によってターゲット層が異なります。例えば、新聞広告の場合は年配層に読まれるケースが多いでしょう。
このように各媒体の特徴を捉えると、ある程度はターゲットを絞れます。ただし、マス広告は全体的に正確な効果分析が難しいといった側面もあります。メリットとデメリットを踏まえた上で、どう活用するかを考えなければなりません。
インターネットが普及した現代でマス広告に需要はあるのか
インターネットの普及により、デジタル広告の存在が大きくなっています。テレビ離れや新聞離れを指摘する声も少なくありません。インターネットの利用者が今後も増え続けた場合、マス広告の需要はなくなるのではないか、もはや今既になくなっているのでは?と不安に感じる企業もあるかもしれません。
しかし、その心配は無用です。マス広告には、デジタル広告と比べて信頼性の高さに強みがあります。特に、テレビCMを認められた企業は、大きな信頼を得ていることが分かります。テレビCMを出稿するときは、厳格な審査をクリアしなければならないためです。
加えて、テレビ離れが少しずつ現れているといえども、2021年のテレビ視聴の行為者率は全年代平均で70%を超えました。他のマス媒体も、年齢層によっては多くの人に支持されています。マス広告も使い方次第では、企業活動を支えてくれる強力な手段となるでしょう。
マス広告とデジタル広告の主な違いは「目的」
マス広告とデジタル広告の主な違いは「目的」です。どちらにも一長一短があるため、目的に応じて使い分けなければなりません。無論、併用することも選択肢のひとつに挙げられます。
マス広告が使われる主な目的は、認知の拡大です。テレビCMやラジオCMで宣伝すれば、意図せず番組を視聴していた人にもアプローチできます。はじめは企業や商品に興味がない人も、マス広告で何度も接触するうちに関心を示す可能性もあります。
一方で、広告から直接コンバージョンを狙うには、デジタル広告がおすすめです。マス広告の場合は、テレビCMを見た人が自らインターネットで調べたり、企業に電話で問い合わせたりしなければなりません。デジタル広告であれば、クリックするだけで自社サイトへの誘導が可能です。
存在を知ってもらう場合はマス広告を、広告から直接コンバージョンに繋げたいときはデジタル広告を活用しましょう。
4種類あるマス広告の特徴を解説
ここで、4大マス広告の特徴を紹介します。予算に余裕があり、業務に支障が出ない場合は、それぞれを併用した方が、より多くの人に宣伝できます。メリットとデメリットを見比べながら、どの広告を利用するか決めてください。
テレビCM
テレビCMの特徴は、権威性が強いことです。テレビCMは審査が厳格であるため、放映されるだけで世間から信頼を得られやすいメリットがあります。権威性を生かせば、自社や商品およびサービスの信頼獲得にも繋がります。
さらに、インパクトの強いテレビCMを制作できれば、世間で流行する可能性がある点も強みのひとつです。マス広告の中でも利用率が高く、映像を上手く生かせば多くの人に印象を与えます。ストーリーや出演者も考慮しつつ、どのようなフレーズで宣伝するかを入念に考えましょう。
一方で、テレビCMは老若男女にかかわらず、誰もが視聴するマス広告です。したがって、ターゲット選定は他の広告と比べても難しい傾向があります。効果計測も視聴率を頼りにするのが一般的で、正確な分析がしづらい点もデメリットです。
参照:総務省|令和4年版 情報通信白書|総論
ラジオ広告
ラジオ広告は、テレビCMよりもコアな層に届けられます。利用者数はテレビと比べると大幅に少ないものの、番組を熱烈に支持する人が集まりやすい媒体です。ラジオファンの中には、日々の習慣として聴いている人も多くいます。そのため、繰り返し訴求しやすいところが強みです。
また、ラジオは作業中に聴取されるケースも少なくありません。主な場面が、車を運転しているときです。何気なく聴いていたにもかかわらず、CMが繰り返し流れていたために内容が記憶に残るケースもあるでしょう。このように、聴取者へ自然に訴求できる点もラジオ広告のメリットです。
しかし、他のマス広告とは異なり視覚にアプローチする宣伝ができません。聴取者からすれば、商品やサービスのイメージをしづらいのがデメリットのひとつです。音声のみで魅力を伝えるべく、効果音やストーリー設計を工夫しましょう。
参照:総務省|令和4年版 情報通信白書|総論
雑誌広告
雑誌広告の強みは、回読率(1部あたりの閲覧者数)が高い点です。購入した雑誌を家族や友達と一緒に見た経験がある人もいるでしょう。1冊を購入するだけでも、複数の人々に情報を届けられます。
加えて、特定のジャンルごとに出稿されるため、他の広告よりもターゲット選定しやすいのも特徴のひとつです。仮にある人物がファッション誌を購入した場合、少なからず衣服やアクセサリーなどに興味を持っている可能性があります。
読者にアプローチするためにも、カラー写真と誌面の大きさを生かし、商品やサービスの魅力を最大限に引き出しましょう。特定の層を訴求する際に効果的なマス広告です。
雑誌広告のデメリットとして、効果測定の難しさが挙げられます。雑誌を読んだ人の中で、何人が自社の商品やサービスを購入したかを正確には把握できません。数値は気にしすぎず、多くの読者に魅力を伝えることに集中しましょう。
新聞広告
マス広告の中でも、特に長い歴史を持つ媒体が新聞広告です。新聞に掲載される点から強い権威性を持ち、主に高齢者層の支持を得ています。一部購入すれば家族と共有できるため、雑誌広告と同じく回読率の高いマス広告です。図書館やホテルで、多くの人に新聞が読まれることもあります。
地方新聞であれば、地域に特化した発信も可能です。地方のトピックを取り入れれば、ターゲットをある程度選定できます。地域を限定して商品やサービスを提供する企業におすすめです。新聞は毎日発行されるため、タイムリーな話題を用いて宣伝してもいいでしょう。
主なデメリットとして考えられるのは、若年層への訴求が難しい点です。10〜30代の新聞の閲読者は、2021年では10%にも達しませんでした。ターゲット層は、自ずと高齢者層に絞られてしまいます。加えて、全体の情報量が多いため、読み飛ばされるケースも考慮しなければなりません。
参照:総務省|令和4年版 情報通信白書|総論
マス広告のメリット
デジタル広告が多様化し、マス広告の印象が薄いと感じる人もいるかもしれません。しかし、マス広告ならではのメリットもいくつか存在します。メリットとして挙げられる内容を理解し、最適と思う媒体を活用することが大切です。
幅広い層に認知してもらえる
すでに述べたとおり、マス広告のメリットは幅広い層に認知してもらえることです。
何気なくテレビやラジオをつけていた人が、CMを見聞きすることもあり、マス広告は積極的に媒体を利用しない層にもアプローチできる点が強みとしてあります。
新聞や雑誌も同じく、空いた時間を見つけて読む人もいるはずです。このような層を上手く引きつけるよう工夫しましょう。
デジタル広告の場合、インターネットを使わない人は広告を認知できません。商品を大量に生産する企業は、不特定多数の人に認知してもらう仕組みづくりも目指しているはずです。マス広告では、企業の存在を知らない層(潜在層)にもアプローチできます。新規顧客をつくる上でも適しています。
ブランドイメージの構築に役立つ
マス広告は、企業のブランドイメージの構築にも役立ちます。テレビCMを例に出しましょう。皆さんの中にも、決まった曜日と時間に特定の番組を見る人もいるはずです。テレビCMの種類のひとつに、番組のスポンサーとなるタイムCMがあります。
子ども向けのアニメを放送する時間帯には、玩具やゲームのCMが頻繁に流れます。このように、番組を通して企業の事業内容を伝えられる点がテレビCMの特徴です。ラジオCMもまた、番組に沿ってブランドイメージを構築できます。
雑誌は、マス広告の中でもブランドイメージを構築しやすい種類のひとつです。ジャンルごとにまとめられるため、購読者は企業の事業内容を簡単に想像できます。新聞広告も、一般的にはどのページで宣伝するかが決められています。ページ全体を通して、企業の姿をイメージする人もいるでしょう。
デジタル広告ではアプローチが難しい「シニア層」にも届けられる
デジタル広告は、全ての年代において少しずつ利用者数が増えています。しかし、シニア層の利用はまだまだ少ないのが現状です。
一方、シニア層のテレビ視聴率は90%を超えており、また新聞の購読者の割合も、60代以上は50%を超えています。このことからも、マス広告はシニア層へのアプローチに適した方法だとわかるでしょう。
特に、日本社会は少子高齢化が著しく進んでいます。総務省統計局によると日本全体の人口(2022年)が約1億2,500万人である中、高齢者人口(65歳以上)は3,600万人以上に達しました。つまり、我が国の約25%は高齢者で占めている状態です。
幼い孫を持つ人であれば、子ども向けの商品をテレビCMで見て買おうと考える人もいるかもしれません。このような行動も考慮すると、さまざまな商品がマス広告を利用するメリットがあります。
参照:総務省|令和4年版 情報通信白書|総論
マス広告を出稿するまでの流れ
マス広告の出稿をスムーズに進めるためには、あらかじめ流れを押さえなければなりません。媒体によっては、手続きに数カ月かかるものもあるため、なるべく早いうちに準備を整えておくことが重要です。出稿までのプロセスは、大きく4つに分かれます。
・広告代理店と打ち合わせる
・広告枠を確保する
・審査に通過する
・広告データを入稿する
それぞれのプロセスにおいて、どのような手続きが必要となるかを確認してください。
1. 広告代理店との打ち合わせ
マス広告を出稿するには、広告代理店と打ち合わせする必要があります。広告代理店は、宣伝する企業と広告枠を持つ企業の仲立ちをするのが仕事です。相談すれば、どのメディアで配信するのが良いかを提案してもらえます。
広告代理店と打ち合わせするときは、次の項目を確認するといいでしょう。
・広告を配信したいメディア
・出稿する目的
・広告の内容
・広告を届けたいターゲット層
マス広告の種類によって、配信するメディアも異なります。広告代理店によって扱うジャンルが異なるケースもあるため、あらかじめサービス内容を調べてください。
出稿する目的や内容を細かく伝えれば、最適なメディアを提案してもらえます。積極的に質問しつつ、自社にふさわしいところを選びましょう。
2. 広告枠の確保
広告代理店との打ち合わせの中で、広告枠を確保します。入念に話し合った方が望ましい内容は以下のとおりです。
・広告を掲載する時期や回数
・配信する規模
・広告の長さ
広告枠を定めることで、どのような内容で出稿するかを決められます。例えば、上述したタイムCMの場合は、大きく分けて3つの種類があります。
・30秒間
・60秒間
・90秒以上
新聞広告であれば、記事のどこに広告を掲載するかを決めましょう。一般的に用いられるのが、記事下に掲載する方法です。他にも、サイズで広告枠を細かく決められます。
雑誌広告も同じく、掲載する場所が大きなカギを握ります。なるべく目立つところに配置し、読者へ認知されるよう工夫しなければなりません。加えて、色数やページ数も合わせて選んでください。
3. 審査
広告枠が決まったら、広告を制作して審査に出します。いずれのマス広告も、原則として企業の審査と出稿内容の審査の2つに通過することが条件です。結果が分かるまで数カ月程度かかります。
審査を受ける際には、以下の書類などを用意しなければなりません(広告の種類により異なることもあります)。
・企業について記載されたパンフレット(ホームページ)
・履歴事項全部証明書
・商品やサービスにかかる説明書
他にも、広告をつくる際には次のルールに違反しないよう気を付けましょう。
・事実と異なる表現をしない
・誇大表現をしない
・視聴者(購読者)の誤解を招く表現は避ける
出稿するメディアによって基準は細かく異なるものの、基本的なルールは守ってください。
4. 広告データの入稿
審査に通過したら、広告データの入稿を行います。入稿する際には、あらかじめ期限が設けられます。納期に間に合うよう、しっかりとスケジュールを組みましょう。
また、広告は提出後すぐに出稿されるわけではありません。メディアによって目安が異なるものの、出稿までに数カ月の日数がかかる点を押さえてください。雑誌広告は4大マス広告の中でも特に時間を要しますので計画的に利用しましょう。
広告が出稿されたら、日程を設けて効果測定に移りましょう。改善点を見つけ出し、次回以降の制作に生かすことが大切です。マス広告を効果測定する方法については後述します。
マス広告の効果測定方法は?
マス広告の効果測定の方法は、メディアによって細かく異なります。テレビCMの場合は、GRPを使うのが基本です。一方で、紙媒体(主に新聞広告)ではCPRが測定に使われます。
ラジオCMの場合、広告の効果を自動で集計できません。そのため、調査票やアンケートの結果を参考にする必要があります。他のメディアと比べると、効果測定の精度はやや下がります。
ここでは、テレビCMと紙媒体に分けて効果測定の方法を説明しましょう。
テレビCMではGRPを測定
テレビCMでは、効果測定の指標としてGRP(Gross Rating Point)が使われます。「延べ視聴率」と呼ばれる指標であり、世帯を基準に特定の番組の視聴率を算出します。GRPの計算方法は次のとおりです。
GRP=世帯視聴率×CMの本数
例えば、世帯視聴率が15%の番組でテレビCMを3本流したとしましょう。この場合、GRPは「15%×3本」で45GRPと求められます。単位がパーセンテージであるため、延べ視聴率が45%とも表現できます。
GRPの注意点は、たとえ世帯がテレビを点けっぱなしにしても合わせて計測される点です。必ずしも、カウントされた全世帯がテレビCMを見ているわけではないことを押さえてください。
紙媒体ではCPRを測定
紙媒体では、CPR(Cost Per Response)を測定に用いることがあります。CPRは、顧客からのレスポンス1件あたりにかかる費用のことです。レスポンスに含まれる顧客の行動は、資料請求やサンプルの問い合わせが該当します。
CPRの計算方法は「広告費÷レスポンス件数」です。例えば、広告費が50万円かかり、50件の資料請求を獲得したとしましょう。この場合のCPRは「50万円÷50件」で1万円と求められます。
CPRとよく似た指標がCPA(Cost Per Acquisition)です。こちらは「広告費÷コンバージョン数」で計算されます。
まとめ
潜在層も含めて、より多くの層へ商品やサービスを認知させたい場合はマス広告がおすすめです。マス広告を発信できる媒体はテレビ、ラジオ、新聞、雑誌の4種類があります。それぞれの特性を押さえ、自社に合ったものを選びましょう。
マス広告を出稿するには、厳格な審査を通過しなければなりません。広告代理店と打ち合わせをするなかで、広告の内容やターゲット層の選定を入念に行うことが賢明です。出稿したあとに効果測定も行いつつ、マス広告の修正に生かしてください。