さまざまな企業のマーケティングの主流がWeb、SNSなどに移行しつつあります。WebやSNSの広告の特徴として、プラットフォーマーが消費者に合わせてターゲット選定することがあります。
一方、消費者から見れば、従来のテレビ・雑誌などの媒体に加えて、情報量・情報源が膨大に増えた中で自分の好みの商品・サービスを選択しなければならず、選択に迷いが生じたり、誤った選択をしたりする可能性もあります。
ブランディングデザインを活用し、視覚的にもわかりやすい伝達ができれば消費者が自社商品・サービスに目を留める機会を増やすことができるでしょう。
ぜひ本記事を参考にブランディングデザインの具体的なやり方を学んでください。
ブランディングデザインとは情報の視覚化
ブランディングデザインとは、消費者やターゲットに対し、自社商品やサービスに関する情報を視覚的に訴求するためのデザインを意味します。
具体的には、ロゴ、パッケージ、ウェブ、広告などの各デザインが該当します。例えば、初めて見たお菓子の新商品でも、ロゴやパッケージが馴染みあるブランドの場合、つい買ってしまう、という経験はあるでしょう。
それは、そのロゴやパッケージを通じて、「この菓子メーカーの商品は安心」「この会社のお菓子はおいしい」など信頼感・安心感があるからです。
このように、自社のコンセプトや価値観を反映し、消費者に効果的なブランドイメージを持たせることによって、消費者はそのデザインを見ただけで、商品を買ってくれるなどの効果が引き出せます。
また、ブランディングデザインは、単なる見た目の良さだけではなく、企業の経営理念や経営戦略を反映させ、他社との差別化や競争力の向上など企業戦略の縮図ともいうべき重要な一面もあります。
ブランディングデザインがなぜ重要視されているのか?
ブランディングデザインを実践していくことで、消費者にライバル企業ではなく、自社の商品を選んでもらえる可能性が高まるからです。ブランディングデザインに取り組むことで、期待できる成果や効果は以下の通りです。
顧客からの信頼の獲得
「〇〇社の商品・サービスだから安心」という信頼を獲得できます。
経営基盤の安定
価格競争から抜け出て、経営がより安定します。
商品・サービスの品質向上
非価格競争で得た利益を積極的に商品開発に振り分け、さらなる信頼感を勝ち取る、などです。
自社ブランドのファンを作ることにより、経営面で多くのメリットが得られるため、ブランディングデザインは重要といえます。
ブランディングデザインの目的・役割とは?
ブランディングデザインの目的は、主に以下が考えられます。
「このデザインといえば◯◯」というイメージ統一
競合ブランドとの差別化
ブランド価値と認知向上、ファンづくり
消費者の共感を生む
順番に詳しく見ていきましょう。
「このデザインといえば◯◯」というイメージ統一
消費者からブランドを認識されて、信頼してもらうためには、ブランドイメージの統一が重要です。
イメージを統一することで、消費者から「このデザインといえば○○だな」「この会社の商品は品質が良い」など信頼感や安心感を獲得できます。
単なるロゴや色などのデザイン要素だけでなく、企業の理念・文化からブランドの価値観まで総合的にコーディネートすることで、初めてブランドイメージの統一性が高まり、消費者に印象的なメッセージを伝達できます。
その結果、ブランドロイヤリティが高まり、自社商品・サービスのリピート購入につなげることができるのです。
競合ブランドとの差別化
競合ブランドとの差別化とは、他社の商品・サービスと比較して、自社の優れた点を強調し区別することです。具体的には、機能面、デザイン性、カラーバリエーション、価格などの点での優劣になります。
競合ブランドとの差を明確にすることにより、消費者に新鮮な印象を残すことができます。
ただし、差別化は単に他社と違うだけでは不十分で、消費者にとって有益なものでなければなりません。
明確に差別化ができているブランディングデザインは、競合ブランドとの差異が明確になっているだけではなく、その競争に勝ち抜いて、消費者に信頼感、安心感を与え、ブランドロイヤリティーを生み出します。
ブランド価値と認知向上、ファンづくり
ブランド価値とは、商品・サービスに対する消費者の評価や信頼度を示すものです。企業は、ブランドの認知を向上させながら、価値を高めるために、消費者のニーズを満たしていく必要があります。
ブランドの認知向上とは、より多くの人に知ってもらい、そのブランドに関するポジティブなイメージや知識を持ってもらうことです。
ブランドの認知が向上すれば、消費者はブランドにロイヤリティを持ってくれるため、継続的に自社の商品・サービスを利用するようになります。
認知を上げるためには、コンセプトを明確にして、ブランドのストーリーやバリューを的確に伝え、ブランドへの共感を持ってもらうなど消費者の心にアピールしていきましょう。ブランドに好感や愛着を持ってもらうデザインを作り出すことも重要です。
こうした活動により、自社商品・サービスと長期的な関係を築いてくれるファンが生まれます。ファンはそのブランドの応援団にもなるため、SNSや口コミで他の消費者にも拡散するようなケースもあります。企業にとって、彼らはリピーターであるだけでなく、自ら進んで営業をしてくれるのと同じ効果があるのでとても大事な顧客層に昇華します。
消費者の共感を生む
昨今では、共感マーケティングともいわれるほど消費者の感情に訴え、消費者とのつながりや信頼関係を築こうとするマーケティング手法が話題となっています。
共感を生むためには、ブランディングデザインを構築する際に、以下の3つの要素をしっかりデザインしましょう。
・人への共感
・組織への共感
・商品・サービスへの共感
ただし、3つ全てに対し共感を得るのはなかなか難しいので、優先順位をつけて取り組むと良いでしょう。
例えば、最近は環境配慮が世界的に広がっている価値観になっています。住宅メーカー、住宅機器メーカーなどは「環境にやさしい」といったイメージで人や商品に対する共感をブランディングデザインを通じてアピールしています。
ブランディングデザインで重要な考え方
ブランディングデザインの誤った考え方に、デザインの美的感覚にとらわれ過ぎることが挙げられます。
企業としてのブランド戦略の最終目的はライバルの他社と非価格戦略によりブランドロイヤリティの高い顧客を囲い込み、リピーターになってもらい、適正な利益を上げる点にあります。
ブランディングデザインを企画する際はデザインなどの見た目にとらわれがちですが、より大事なことは、消費者から「〇〇社らしい」デザインと認識され、その結果、消費者の心に自社のブランドを強く意識させることです。消費者はそのブランドに親しみを持ち、自社商品のファンへとなってくれるでしょう。
したがって、単なるマーケティング戦略だけにとどまらず、企業の経営戦略の重要部分としてブランディングデザインを構築しましょう。
ブランディングデザインに関わる要素
ブランディングデザインの要素には、ロゴデザイン、フォント、カラーパレット、写真やイラストなどがあります。ここでは、それぞれについて、解説していきます。
● ロゴデザイン
ロゴデザインは、企業や商品・サービスのアイデンティティを表現するうえで、とても重要な役割を持っています。優れたロゴデザインは、その企業や商品・サービスのコンセプトや良い面を一目で分かるように表現しています。ブランドイメージを強化するには欠かせないものです。
ただし、商標権などの他社の知的財産権を侵害してはならず、他社からも侵害されないよう日ごろからブランドの管理を怠らないようにしましょう。
● フォント
フォントも重要な要素の一つです。目的に応じた適切なフォントを使用しましょう。ブランドのイメージを決定づけるものになります。
丸みを帯びたフォントは優しさをイメージさせ、消費者に安心感を与えます。一方、太字などは力強く堅固な印象を与え、書体によっては古風であったり、威厳的であったりするなど同じ文字でもフォントで消費者に与える印象が変わってきます。有名ブランドの多くは、フォントだけでなく、文字間まで徹底的にこだわって開発されています。
● カラーパレット
カラーパレットとは、企業や商品・サービスのイメージを表現するのに使用される色の組み合わせを意味します。商品・サービスのイメージに合わせて選定されます。カラーパレットはブランドイメージを強化するためにも重要な役割があります。
特定のカラーが消費者に与えるイメージや感情を利用して、戦略的にカラーパレットを選び、ブランドイメージをより具体的に表現することが可能になります。
カラーバリエーションを活用し、多様な色彩で商品の雰囲気に違いを生み出すなどの効果も期待できます。
● 写真やイラスト
写真やイラストは、商品・サービスのイメージを表現するために重要な役割を果たします。写真やイラストは商品・サービスの物理的な魅力や特徴のみならず、コンセプトや世界観も伝えることができます。
写真は、消費者に正確な情報を与えたい場合に効果的です。また、著名人を活用したプロモーションなどでは、著名人そのものが広告塔となり、より有効な方法といえます。
イラストは見る人の想像力をかき立てたい場合、期待感を持たせたい場合、文字や数字などを直感的に理解させたい場合などで活用すると良いでしょう。
具体的なブランディングデザインのやり方
それでは、ブランディングデザインの具体的な方法について解説していきます。まず、コンセプトを明確にし、キーワードを言語化して、どういったメディアで消費者にコンタクトを取るのかを定めます。
そして、デザイナーとコンセプトを共有してデザイン、スタイルガイドを作成して一貫性のあるブランドマネージメントを行います。
● コンセプトの明確化
コンセプトとは、どのようなターゲット顧客層にどのような価値観をどのように提供していくのかというマーケティング戦略の核となる考え方をいいます。
まずは、このブランドコンセプトを明確にします。消費者から実際にどのように思われているのか、現実的なブランドイメージを把握することも重要です。両者の認識にギャップがあると正確かつ統一感を持ったデザインができず、誤ったメッセージやイメージを消費者に伝えかねません。
現状を把握したうえで、ターゲット顧客層に他社にはない自社独自の価値(消費者に対して役立つもの)を設定します。
わかりやすい簡潔な表現で、他社にはない独自性を兼ね備え、かつ社会やターゲットとする顧客層の要請に応えているかといった点に留意しながら、ブランドコンセプトを定めていきましょう。
● ブランドが表すキーワードを言語化
ブランディングデザインは自社商品・サービスの情報を可視化してデザインの形にして提供するものですが、そのためにはキーワードを決めておく必要があります。
理由は、言語による情報がなければ、そのブランドのイメージに対して人々に共通した理解を得ることができないからです。キーワードがしっかりしていると、人々のイメージのギャップを埋め、統一性のあるデザインができるのです。
キーワードなので、短く、できれば分かりやすいキャッチフレーズまたはスローガンのようなものが良いでしょう。分かりやすいキーワードは、デザイナーに依頼する際も意思疎通をスムーズにし、よいデザインを得るための近道にもつながります。
● 顧客とのコンタクトポイントを把握
コンタクトポイントとは、ブランドと消費者が接点を持つ場・媒体を指します。例えば、webサイト、広告、実店舗、商品カタログ、パッケージなどが挙げられます。
さまざまなコンタクトポイントにおいて、それぞれの媒体の特徴を把握したうえでデザインを考えていきます。
コンタクトポイントはさまざまでも、デザインをブランドの世界観で統一し、一貫性のあるブランドメッセージを打ち出すように考える必要があります。
また、コンタクトポイントは消費者の購買行動に合わせて、購入前、購入時、購入後などに分けることもできます。購入前は広告やwebサイトが該当しますが、購入時は実店舗のデザインも重要なコンタクトポイントになります。高額商品・サービスになればなおさら実店舗のイメージが重要です。
購入後は保守・メンテナンスなどアフターサービスや、サブスクリプションなどのサービス利用者に向けた対応もコンタクトポイントになります。
● デザインの作成
いよいよデザインの作成に入ります。デザイナーに依頼するのが一般的です。デザイナーに依頼する際、「全てプロにおまかせ」と思いがちですが、丸投げではこちらが期待するイメージと乖離するデザインが提案される可能性もあります。
デザイナーには、依頼するブランディングデザインの、コンセプトやキーワードをしっかり説明し、想定するコンタクトポイントをはっきり伝えましょう。これまでの作業がしっかりできていれば、デザイナーへの依頼もスムーズに進むでしょう。
デザイナーとは色、フォントや画像などのデザインの要素についても、ブランドのイメージを外さないようにしっかりすり合わせていきましょう。
また、外部のデザイナーに依頼する際は、予算や納期もある程度余裕をもって依頼したいものです。
● スタイルガイドの作成
スタイルガイドとは、出版物やWebサイトにおいて、統一したデザインや表現などを規定する手引書を指します。ブランディングデザインにおけるスタイルガイドでも、完成したデザインの利用法を詳細に規定したルールブックのような役割を果たします。
主な内容は、これまで見てきたように、ロゴデザイン・フォント・カラーや写真・イラストといったデザインの要素や、どういう時にどういうデザインを示せばいいのかというコンタクトポイントに関する取り決めになります。
ターゲットとなる消費者層に対して、統一感のあるイメージやメッセージを与えることがマーケティングの成否を左右するといっても過言ではありません。例えば、タブロイド紙に高級ブランドの広告が掲載されていれば、ブランドのイメージを損なってしまうかもしれません。これは、ブランドマネジメントの基本となるものです。
まとめ
ブランディングデザインとは、自社商品やサービスに関する情報をビジュアルを用いて発信し、デザインの形で伝えることです。そのゴールは他社と差別化し、消費者に自社商品・サービスをリピート購入してもらえるファンづくりです。
そのために、消費者がデザインを見たら自社の商品・サービスに信頼感や安心感を持つような関係をしっかり築いていく取り組みが重要です。
企業としての理念やブランドに対する想い、消費者からの期待などをしっかり把握して、統一性のあるメッセージをデザインに落とし込んでいきましょう。