内閣府が調査している「青少年のインターネット利用環境実態調査」の最新結果(令和4年度/2022年度)が公表されました。(速報版:令和5年/2023年2月28日、報告書:同3月31日公表)
この調査は「青少年インターネット環境整備法 」の施行<平成21年/2009年4月1日>をきっかけに平成21年/2009年から内閣府が毎年秋に調査、翌春に公表しているもので、今回で14回目となります。同法で“「青少年」とは、十八歳に満たない者をいう"と定義しているため調査対象者は17歳までになっています。
《調査概要》
目的-青少年インターネット環境整備法の施⾏状況のフォローアップのための基礎データを得ること
時期-毎年11月~12月頃実施
エリア-日本全国
対象者
〔青少年〕満10歳~満17歳の青少年
〔保護者〕青少年の同居の保護者
〔低年齢〕0歳~満9歳までの子供の保護者 ※平成30年/2018年から追加
(表記注)満10歳から満17歳を「⻘少年」、その保護者を「⻘少年の保護者」、0歳から満9歳を「低年齢層の⼦供」、その保護者を「低年齢層の⼦供の保護者」と表記する。「保護者」と表記する場合には0歳から満17歳までの⼦供の保護者を指す。
今回は本調査の中から、主に青少年(10歳~17歳)のインターネット利用状況について、前半で最新の調査結果をまとめ、後半では中長期での環境変化を取り上げて考察していきたいと思います。
※なお、4月1日から本件の担当局が内閣府から「こども家庭庁」に移管しています。
最新版・令和4年度調査 インターネット利用状況 調査結果概観
⻘少年でも利用が定着
98.5%がインターネットを利⽤。GIGA端末も浸透に寄与*。
【階層別】⼩学⽣(10歳以上)の97.5%、中学⽣の99.0%、⾼校⽣の98.9%がインターネットを利⽤していると回答。
・利⽤機器の上位から、スマートフォン(73.4%)、学校から配布・指定されたパソコンやタブレット等(GIGA端末)(63.6%)、ゲーム機(63.2%)、テレビ(地上波・BS等は含まない)(56.0%)、⾃宅⽤のパソコンやタブレット等(48.1%)
〔補足〕令和3年、GIGA端末の配布 ~GIGAスクール構想により1人1台端末環境に~
文部科学省は令和3年/2021年4月から、日本の公立小中学校で1人1台端末環境を整備 。これにより整備された端末は“GIGA端末"とも言われる。
0歳〜9歳の低年齢層
74.4%がインターネットを利⽤。
【階層別】0歳〜6歳では68.1% 、⼩学⽣(6歳〜9歳) では 90.9%がインターネットを利⽤。
○ インターネットを利⽤する機器は、テレビ(地上波、BS等は含まない)(48.1%)、⾃宅⽤のパソコンやタブレット等(38.1%)、ゲーム機(32.5%)、学校から配布・指定されたパソコンやタブレット等(GIGA端末) (25.6 % *但し⼩学⽣(n=941)は55.9 %) 、スマートフォン(24.6%)、契約していないスマートフォン(20.4%)、携帯電話(5.4%)
“自分専⽤端末"が増加
自分専用スマホは89.5%。中学生でも91%。
○ インターネットを利⽤する⻘少年のうち、⼦供専⽤の機器を利⽤している割合が⾼いのは、スマートフォン(89.5%)と携帯電話 (76.2%)。
【階層別】スマートフォンでは、学校種が上がると⼦供専⽤の割合が⾼くなる。⼩学⽣(10歳以上)の64.0%、中学⽣の 91.0%、⾼校⽣の98.9%が自分専⽤と回答。
利⽤内容 ~インターネットを何に使っているのか~
検索を抑えて動画がトップ
○ インターネットを利⽤すると回答した⻘少年の利⽤内容は「動画を見る」がトップ。
階層別 ⾼校⽣では動画を⾒る(96.2%)、検索する(91.2%)、⾳楽を聴く(91.0%)が上位。勉強をするは75.6%。
中学⽣では動画を⾒る(93.9%)、検索する(87.4%)、ゲームをする(84.9%)が上位。勉強をするは71.2%。
⼩学⽣(10歳以上)では動画を⾒る(88.1%)、ゲームをする(86.2%)が上位。勉強をするは70.0%。
○ 学校から配布・指定されたパソコンやタブレット等(GIGA端末)は、勉強をする(79.8%)、検索する(61.6%)が上位であり、用途別に使い分けている模様。 なお、新たな環境に対応して、令和3年から「撮影や制作、記録をする」が新規追加されている。
(注1)「いずれかの機器」とは、⻘少年に対して調査した7機器〔スマートフォン、契約していないスマートフォン、携帯電話、⾃宅⽤のパソコンや タブレット等、 学校から配布・指定されたパソコンやタブレット等(GIGA端末)、ゲーム機、テレビ(地上波・BS等のテレビ視聴時間は含まない)。〕のうち、いずれかの機器でインターネットを利⽤していると回答した⻘少年をベースに集計。
(注2)「スマートフォン」とは、スマートフォンでインターネットを利⽤していると回答した⻘少年をベースに集計。
(注3)「配信したことがある」は、いずれかの機器で撮影や制作、記録をすると回答した⻘少年をベースに集計。回答数は以下の通り。令和4年度(n=1143) 令和3年度(n=1000)
(注4)令和3年度から「読書をする」、「マンガを読む」と「撮影や制作、記録をする」を新規追加。令和2年度までは、「投稿やメッセージ交換をする」は「コミュニケーション」、「ニュースをみる」は「ニュース」、「検索する」は「情報検索」、「地図を使う」は「地図・ナビゲーション」、「⾳楽を聴く」は「⾳楽視聴」、「動画を⾒る」は「動画視聴」、「読書をする」と「マンガを読む」は「電⼦書籍」、 「ゲームをする」は「ゲーム」、「買い物をする」は「ショッピング・オークション」、「勉強をする」は「勉強・学習・知育アプリやサービス」としていた。
参考)
〇 インターネットを利⽤している低年齢層の⼦供の利⽤内容(保護者による回答)
「動画を⾒る」(93.4%)、「ゲームをする」(60.6%)が上位。3位は「勉強をする」(36.6%)だが、6-9歳の小学生になると「勉強する」のスコアが上がる(57.9%)。小学生から学習用にも使われていることがわかる。
(注1)「いずれかの機器」とは、⻘少年及び低年齢層の⼦供の保護者に対して調査した7機器のうち、いずれかの機器でインターネットを利⽤していると回答した⻘少年及び低年齢層の⼦供の保護者を ベースに集計。0歳(n=14)、1歳(n=38)は、回答数が少ないため図⽰しない。
(注2)⻘少年は本⼈に、低年齢層の⼦供は保護者に対して調査した結果であるため、直接⽐較をすることはできない。
【Tips】
令和4年最新調査結果サマリー
⒈ 青少年のインターネット利用は定着。低年齢層にも浸透。 GIGA端末整備なども寄与。
⒉ 自分専用スマホが増加し89.5% (うち中学⽣91.0%、⾼校⽣98.9%)
⒊ 利用率順位は、①動画 ②検索 ③ゲーム ④音楽 ⑤勉強
⒋ 動画は低年齢から利用。
⒌ インターネットで学習するのが半数を超えるのは、小学生に上がるタイミング。
考察) 現在の起点を読む スマホネイティブ世代の背景
前述で触れたように、インターネット利用の広がりとあわせて、“自分専⽤端末"、特に“自分専用スマホ"が増加しました。このことは情報環境の変化・進化に大きく関係することになります。
本稿の後半では、最新調査結果を踏まえて 調査開始からの14年間のうち、現在の起点となった注目の事象にフォーカスして取り上げてみたいと思います。
スマホの “爆発的普及" (平成24年/2012年、平成25年/2013年)
まず、日本で世の中にスマホが普及した時期について見てみましょう。
※このテーマについては総務省調査に最適な図表がありますのでそちらを引用します。
特に2011年→2012年→2013年には スマホ保有率が非常に高い伸びを見せました。総務省の情報通信白書(平成29年版)は これを「スマホの爆発的普及」という言葉で表現しています。
まさにこの時期こそが「スマホネイティブ」と言われる人たちが現れる起点であり、情報環境進化の分水嶺だったと言えるでしょう。
この時期の急激な普及を表しているグラフと表を参照してみましょう
いまから10年ほど前のこの時期から一気にスマートフォンの普及が拡大するのですが、数年のうちに20代を中心にして若い世代からスマホ所有が広がっていったことがわかります。
以下はその時期の「青少年のインターネット利用環境実態調査」の内容です。
平成24年度 2012年度
「スマートフォンを所有する青少年が増加」というコメント初出。
「〇概要①青少年の携帯電話の所有状況」欄の見出しに“スマートフォンを所有する青少年が増加"と記載される。
階層別 青少年が所有する携帯電話のうちスマートフォンの占める割合は、小学生では1割弱、中学生では2割半ば、高校生では5割半ば。
平成25年度 2013年度
前年同様「スマートフォンを所有する青少年が増加。」と記載される。スマホシェアが伸長。
階層別 青少年が所有する携帯電話・スマートフォンのうち、スマートフォンの占める割合は、小学生では1割台後半、 中学生では約5割、高校生では8割台前半
Findings:
このあたりから世の中はスマホの時代にはいっていくことになります。
時代背景としては、iPhone 4、4S、5、5sが日本で発売され話題となったのがこの時期で、iPhone以外の端末もあわせて人々のスマホ所有意欲に拍車をかけました。
2010年6月24日 iPhone 4 発売
2011年10月14日 iPhone 4S 発売
2012年9月21日 iPhone 5 発売
2013年9月20日 iPhone 5s 発売(ドコモも加わり大手3キャリア全てが取扱開始)
※ちなみに、4SのSは発売時は大文字でした。5sのsの小文字表記については「5」と「S」の形が似ているために、発売時に小文字sを採用して5sという表記になったという話があります。
親よりもネットに詳しい子供たちの出現(平成24年/2012年)
「スマホの爆発的普及」があった時期の平成24年/2012年に、新たな調査が設定されます。
平成24年/2012年の「保護者と子どもでは、どちらがインターネットに詳しいと思いますか?」 という質問に「自分の方が詳しい(計)」と回答した保護者は、小学生では7割強、中学生では4割強、高校生では約2割という結果。 学校種が上がるにつれ、保護者よりも青少年の方がインターネットに詳しくなる傾向が出現しました。
この質問は翌年の平成25年/2013年にも実施 (調査結果の傾向は同様)されましたが、平成26年/2014年には無くなっています。(代わって「保護者のインターネットの利用状況」が調査に加わっています)
Findings:
青少年のインターネットのトラブルリスクに対する保護という視点からの本調査の質問設定をさかのぼってみると、平成22年/2010年の回からは“保護者の管理(ペアレンタルコントロール)"(携帯電話やパソコンを使用することについて、注意を払っていることは何か?という質問)という項目が設定されていましたが、平成24年/2012年~平成25年/2013年にはこの質問(保護者と子どもでは、どちらがインターネットに詳しいと思いますか?)に代わっています。さらに平成26年には「保護者のインターネットの利用状況」が調査に加わることになりました。数年のうちに訪れた大きな時流変化を示しているという意味で注目される調査の設問だったと言えるでしょう。
“自分専用機器"と“低年齢化"(平成30年/2018年)
情報通信白書が「スマホの爆発的普及」と表現した翌年(平成30年/2018年)、“自分専用機器" と “低年齢化"という新たなトピックが出現します。
平成30年度 2018年
自分専用スマホが一般化。/インターネット利用の低年齢化が進行。
この年、機器の専用状況を尋ねる設問を新規設定 。自分専用スマホ普及の確認へ。
○ インターネットを利用すると回答した青少年は、学習用タブレット(91.0%)、携帯音楽プレイヤー(87.7%)、 子供向けスマートフォン(80.6%)で、子供専用の機器を利用している割合が高い。
○ スマートフォンでは、学校種が上がると子供専用の割合が高くなり、小学生では35.9% 中学生では78.0%、高校生では99.4%が子供専用と回答。
同年、[0歳~満9歳の低年齢層の保護者]が調査対象に追加。利用も低年齢化。
○ 低年齢層の子供の56.9%がインターネットを利用。年齢が高いほど利用率も高くなる傾向にある。
○ インターネット利用機器は、スマートフォン(33.1%)、タブレット(26.7%)、携帯ゲーム機(15.2%)が上位。
○ インターネットを利用している低年齢層の子供は、学習用タブレット(75.9%)、子供向け携帯電話(69.8%)で、子供専用の機器を利用している割合が高い。
○ スマートフォンについては、ほとんどの子供が親と共用で利用している。
○ インターネットを利用している低年齢層の子供の利用内容の内訳は、動画視聴(85.3%)、ゲーム(60.0%)が上位。
Findings:
先述した2011年~2013年の「スマホの爆発的普及」から5年ほど経過して、「情報端末の自分専用化」と「低年齢化の進行」という2つの傾向が調査によって明らかになりました。
後者については、スマホの普及に従って、低年齢層の子供にもインターネットに触れる環境が増えており、比較的早い時期から話題化はしていました。
例えば、既に2013年には、「スマホ育児」や「知育アプリ」という言葉が、あるママ向け情報サイトの会員アンケート の「ママ流行語ランキング」でトップ10内に選ばれています。 その後も幼児に対する影響や不安、その対策などが世の中に取り上げられていく 中で、内閣府も平成28年度に予め別途「低年齢層の子供のインターネット利用環境実態調査 」を実施、その後、平成30年「青少年のインターネット利用環境実態調査」から2つを統合した形になっています。
利用内容とコロナ禍(令和4年/2022年とコロナ期間)
ここで利用内容の変化を見せた時期であるコロナ禍の期間の比較をしてみたいと思います。コロナ禍に該当する年である令和2年(2020年)、令和3年(2021年)、令和4年(2022年)を見てみましょう。
しかしコロナ禍での変化という視点から、令和2年~令和3年~令和4年の3か年の“伸び率"の方に注目してみると伸び率の高い順に(①検索する ②勉強する ③ニュースをみる ④地図を使う、マンガを読む)という結果となりました。これは「おうち時間」の増加と、その環境下で可能な取り組み内容が反映されているものだと考えられます。コロナ禍期間での新しい体験や習慣を示しているものだとも言えるでしょう。コロナが明けた後も定着するのか、元に戻るのかどうかが注目されるところです。
増え続けるインターネット利⽤時間(令和4年/2022年+コロナ期間)
青少年のインターネット利用時間は年々増え続けている。令和2年→令和3年に急激な伸長。
○ インターネットを利⽤すると回答した⻘少年の平均利⽤時間は、前年度と⽐べ17分増加し、約4時間41分。 ⾼校⽣は、約5時間45分。中学⽣は、約4時間37分。⼩学⽣(10歳以上)は、約3時間34分。
○ ⽬的ごとの平均利⽤時間は趣味・娯楽が最も多く、約2時間49分。⽬的ごとの⻘少年のインターネットの利⽤時間(利⽤機器の合計/平⽇1⽇あたり)
Findings:
コロナ期の(令和2年→令和3年)でインターネット利用時間が激しく増えていることについて見てみますと、青少年全体では +58.1分。内訳は、(勉強・学習・知育)で+23.3分、(趣味・娯楽)で+38.0分、(保護者・友人等とのコミュニケーション)で+11.0分と、時間的には(趣味・娯楽)の増加が大きく現れました。
【Tips】
考察サマリー
調査結果から見えるスマホネイティブ世代の背景として、現在の起点となったいくつかの特筆すべき事象がありました。
1. スマホの “爆発的普及" (平成24年/2012年、平成25年/2013年)
2. 親よりもネットに詳しい子供たちの出現(平成25年/2013年)
3. “自分専用機器"と“低年齢化"(平成30年/2018年)
4. 利用内容とコロナ禍(令和4年/2022年とコロナ期間)
5. 増え続けるインターネット利⽤時間(令和4年/2022年+コロナ期間)令和4年最新
まとめ
14年にわたって実施されてきた「青少年のインターネット利用環境実態調査」を参照すると、青少年に対してインターネットやコミュニケーションサービスが如何に普及浸透していったのかがよくわかります。設問も時代を反映していて令和3年/2021年からは「撮影や制作、記録をする(動画撮影や音楽制作、編集を含む)」という項目が新規追加されています。今回、本調査の結果分析をすすめることで、今後のコミュニケーションサービスへのヒントも得られました。
また、調査開始時期はスマホが一般化する前で、当初は保護者による監視やフィルタリングなどで青少年をトラブルから保護しようとする姿勢でしたが、スマホの普及によって、管理するかたちだけではなく、現状を把握して一緒に回避しようとする姿勢の変化がうかがえました。
青少年はスマホを持つようになって、コロナを乗り越えつつあるいま、より大きく世界も広がっているでしょう。それゆえリアルなコミュニケーションによるフォローも求められるのだろうと思います。大人も同様ですね。