広告効果測定調査のキホン

マーケティング

広告効果測定調査のキホン

広告キャンペーンの成否は何を以って判断すべきでしょうか?トレンド入りでしょうか。ネットニュースに上がることでしょうか。

原則的には、広告キャンペーンの目的に照らして想定されたターゲットに対して、所期の効果を上げることができたか否か、ではないかと考えます。それを検証することは、PDCAでいうところのC(=Check)にあたる重要なプロセスです。広告キャンペーンの効果を把握する方法としては、近年はSNS上の反響を観察するソーシャルリスニングや、アクセスログを解析するといったサイバースペースでの分析方法も有力になってきています。一方で、今でも広告認知率や利用意向喚起などの心理変容を管理指標とする広告キャンペーンも少なからずあります。そうした指標が掲げられた広告キャンペーンについては、依然としてアンケート調査によるアスキングデータの収集が必要になってきます。本稿では、インターネット調査による定量的な効果測定の留意点についてご説明いたします。

事前準備

広告キャンペーンの効果測定と言えば、かつてはプランニングの際にはあまり顧みられず、後回しにされていた印象があります。制作サイドや媒体サイドがサービスで行っていた、という話も聞きます。その後、PDCAの浸透とともに、事前のKPI(Key Performance Indicator/訳は” 重要業績評価指標”)設定と、その検証の重要性が認識されるようになりました。この点から、効果測定を広告キャンペーン計画の一環として位置付け、早い段階で効果検証計画も立案することが望ましいとされます。

なお、効果測定に携わるメンバー、スタッフに関して、制作サイドと同じでよいのか、結果の客観性を担保するために、制作とは無関係のメンバーが行うべきではないかという議論があります。場合によっては、制作や媒体に関わらない効果検証専門のチームを立てるというのも、調査の客観性を担保するための一法かと思います。

[Tips]効果測定計画はキャンペーン立案、KPI設定とセットで

調査項目

効果測定調査の基本となる調査項目は、広告キャンペーンの浸透状況(広告キャンペーンに対する認知・理解)と広告キャンペーンによってスコアを上げたい内容(ブランド認知や購入意向)で、仮に効果系調査項目としておきます。後者は、広告素材を提示する前に確認する必要があります。

【効果系項目】
・広告キャンペーン認知/内容理解
・企業(ないし事業)、ブランド、商品、サービス等の認知/理解
・商品購入意向・サービス利用意向
・企業評価・企業イメージ など

一方で、広告素材を提示した後に、折角なのでそれに対する印象や感想に関する質問項目を設けることがほとんどです。もちろんこれはこれで活用すべきデータではありますが、広告素材を強制視聴させた後のスコアなので、ナチュラルな広告効果とは言えないでしょう。これらについては、「広告コンテンツに対する評価」というくくりで整理するのがよいと考えます。

【評価系項目】
・広告キャンペーン好感度
・広告表現評価
・広告イメージ
・広告キャンペーン要素(タレント、音楽、キャッチコピーなど)に対する評価    など

[Tips]“効果”と”評価”の識別・整理を

広告素材提示方法

対象者に対する広告コンテンツは、動画、音声、印刷物、画像など様々ですが、できるだけ原形のまま提示するのが原則です。

テレビCMなどの動画については、動画ファイルをアップロードして提示するのが望ましい方法です。この方法ならば、対象者の視聴状況が確認できるため、動画を視聴しないと次の設問に進めないといったオペレーションが可能です。ただしアップロードにはそれなりのコストがかかります。一方、動画が格納されているサイトのリンクを提示する方法もあります。コストはかかりませんが視聴したかどうかが確認できないという欠点があります。さらには、静止画にコピーや説明文を組み合わせたストーリーボードを提示する方法もあります。多くの素材について認知だけを把握したいようなケースでは、検討に値するのではないかと考えます。

キャンペーンサイトなどWebサイトについては、原形のまま提示というのが難しい場合、LP(=ランディングページ)などの画像を示して認知を確認するなどしています。いずれにしてもWebサイトについてはアクセスログ解析などによる分析がメインとなります。
なお、比較のために競合など他社の広告コンテンツの提示する場合は慎重な確認が必要です。当該企業等の承諾が得られればもちろん問題ありませんが、無断で広告素材を提示することは原則控えた方がよいと考えます。

[Tips]目的に照らして最適な提示方法を

認知の把握

広告キャンペーン認知の把握は、広告効果測定の基本だと思います。
手法としては、広告素材を提示しての再認認知を

1.(確かに)見聞きした。
2.見聞きしたような気がする。
3.見聞きしたことはない。

の3つの選択肢(SA)で確認するのが定番になっています。1または2と回答した対象者を認知者とします。
なぜ、「見聞きした」「見聞きしていない」の二者択一ではないのかという点については、推測するに、ブランド認知などと比較して広告の場合、認知しているか、認知していないのか、多くの対象者の認識があいまいなので、それに対応する選択肢が必要なのではないかと考えます。その要因としては、広告素材の識別性の低さ─例えば、素材にタイトルがついていない、ひとつの商品に多数の広告素材が存在するなど─が思い当たります。整理すると、広告素材の識別性の低さゆえにあいまいな認識を抱く人が多くなるため、これに対応する「見聞きしたような気がする」という選択肢が必要になる、となります。それとは別に、単に二者択一よりも高い認知率スコアが出る、ということも理由のひとつではあろうかと思います。

[Tips]認知の把握には、定番の選択肢を利用するのが無難かと

購入意向・利用意向の判断

販売促進・利用促進を目的とした広告キャンペーンでは、最も重要とも言える指標だと思います。測定の方法としては、

1.購入(利用)したい。
2.まあ購入(利用)したい。/どちらかと言えば購入(利用)したい。
3.あまり購入(利用)したくない。/どちらかと言えば購入(利用)したくない。
4.購入(利用)したくない。

といった選択肢(SA)を設定し、1または2と回答した対象者を購入(利用)意向者とすることが多いです。もちろん、「どちらとも言えない」などニュートラルな選択肢を加えることもできます。この場合、購入(利用)意向者の数は、理論上、項目を追加しないときより少なくなりますのでご留意ください。

購入(利用)意向に関して注意すべき点としては、”広告効果”の測定ですから、その意向がどの程度広告キャンペーンによってもたらされたものなのか、広告キャンペーンの貢献度合いについて把握しなければならないということです。手っ取り早い方法としては、購入(利用)意向を尋ねる質問の次に、購入(利用)意向者にその理由をMAで問うやり方があります。その質問に「広告が好きだから」といった主旨の選択肢を入れておくのです。ただ、意向理由として挙げられるのは当該商品・サービスの特長や内容に関するものがほとんどで、広告を理由にする回答は微々たるものに─経験上ですが─なりがちです。とは言え、商品・サービスの特長を理由に挙げている回答者の中にも、その特長が広告キャンペーンを通じて伝わり、購入(利用)意向が形成された人もいるわけです。これは広告キャンペーンの効果と言ってもいいのではないか、いう見方もできるでしょう。だとしても、上記の方法での把握は難しいでしょう。

そこで一般的に行われているのが、広告キャンペーンがあった場合となかった場合のターゲット層における購入(利用)意向を比較し、その差分を広告キャンペーンによるものとみなす方法です。実際には「キャンペーンを行う」と「キャンペーンを行わない」を同時に成立させることは不可能なので、キャンペーン開始前にも調査を実施し、終了後のスコアと比較します。前提としては、事前調査と事後調査で、広告キャンペーン以外に大きな影響を与える事象が起こらないことが必要です。ノイズとなるような出来事が、ポジティブなものネガティブなもの含めて起こってしまうと、スコアの差分が広告キャンペーンに由来するものかノイズ由来なのか判断が難しくなってしまいますので、参考値として扱わざるを得ません。

以上のことは、先に挙げた効果系項目のうち、広告キャンペーン認知以外のものには原則当てはまります。したがって、事前事後調査を実施することが効果調査の基本となります。
なお、あくまでも蛇足ですが、スケジュールや費用の関係で、事前調査を行わない場合も、ことによってはあろうかと思います。そうした際の購入(利用)意向における広告キャンペーンの貢献を推測する方便として

- 広告キャンペーンの非認知者を利用
非認知者のスコアを、キャンペーンがなかった場合のスコアとみなして、効果を類推する。
- 広告キャンペーン素材提示前と提示後で比較
広告素材提示前と提示後に同じ質問を行い、変化量を効果と推測する。

などの方法があるにはあります。ただ前者の場合、非認知者のサンプルを一定数─100サンプル程度は確保すべきなので、調査設計時に対策しておく必要があります。場合によってはコストが割高になります。

後者の場合は、やってみると提示後のスコアが明らかに上がることがほとんどなので見栄えはよいのですが、あくまでも強制視聴後(=広告認知率100%)のスコアですので、こちらも参考値程度に利用するのが妥当でしょう。

[Tips]“効果系項目”の把握は、事前事後調査が原則

実査タイミング

事前調査を行う場合は、広告キャンペーンに関する情報が公開される直前が理想ではあります。あまり早々と実施してしまうと、キャンペーン開始までに何らかのノイズが発生したり、調査項目の追加が必要になったりするなど、リスクが大きくなるからです。ただ、情報公開までには確実にサンプル回収を終了しておく必要がありますので、その分の余裕を見込んだ日程を設定するのがよいと考えます。

広告キャンペーン開始後に行う調査については、出稿プランに鑑みて、最も大きな効果が測定できそうなタイミングを設定するのが一般的です。具体的には、キャンペーン終了直後とするのが無難です。もちろん、前半集中で後半は小規模な露出が継続といった場合など、出稿プランによってはキャンペーンが終わり切る前に実施した方が高いスコアが期待できるケースもあります。

なお、これまでのキャンペーンとの時系列比較を予定している場合は、出稿終了から実査までのインターバルは過去の調査に揃えておくのがよいでしょう。インターバルが長くなればその分忘却が進行しますので、例えば出稿終了直後に行った調査と10日後に行った調査を同列に比較できるか、といった問題が生じます。

[Tips]出稿プランが決まった時点で、調査スケジュールの調整を

まとめ

これまで述べたような手法でデータ収集が終了した後は、事前の計画に沿って集計し、どの程度所期の目的を達成したかの判断を下します。このためには、プランニング段階において検証可能なターゲットないしKPIを設定しておくことが必要であることは再度申し上げておきます。これに加えて、結果に対する要因分析をソーシャルリスニングするなど、測定調査では行き届かないWeb上の効果指標なども加味して、改善を図ることが肝要です。

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