「おい坊や、この万年筆、高級そうじゃねえか。え?お父ちゃんの会社がつぶれて倉庫に残ってた在庫を坊やが売ってるって?そりゃ気の毒だなぁ。え、いくらなんだい?千円?!安いじゃねえか、おいちゃんが3本まとめて買ってやるよ。なあみんな、この品質の万年筆が千円だってよ、ほら買わねえ手はねえじゃねえか」瞬く間に商品は売り切れ。裏に回っておいちゃんと坊やはガッツポーズ。どこかで見たような的屋のサクラ商法です。
昭和の時代であれば牧歌的な風景と笑っていられるかもしれませんが、昨今はやや勝手が違います。今はネット上でこういった手法が横行するようになりました。そう、現在ではサクラ商法と言わず「ステルスマーケティング」略して「ステマ」と呼ばれ問題視されています。
ステマの定義と手法
紙媒体においても
ステマを簡単に定義するなら「広告として広告主から受託者に依頼や金銭の授受が行われているのに、広告と表記されず世の中に出ていく記事、書き込み」のこととなります。
冒頭にネット上で、と書きましたが、当初は雑誌などの広告が問題になることも多々ありました。ある商品を客観的にレポートしたあたかも雑誌内の純粋な取材記事かと思いきや、クライアントから広告料を受けた記事風広告だったり、編集と広告主が手を組んでページを作成する編集タイアップ広告であったり。最近では大手の雑誌社や広告会社は問題を認識しておりこのようなケースは減少していますが、本来は【PR】【広告】などの表記をつけて掲出されなくてはならないものです。
SNSにおけるステマ
これがSNSになってくるとより形態が複雑となり、管理が難しくなってきます。ネット上ではありとあらゆる人が発信者になりえますし、ステマの依頼者になり得るからです。
人々の意識の中に、広告は信用しないけれどユーザーの口コミは信用するといった傾向があるため、業者に頼んで優良口コミを大量に投稿させる…また芸能人やインフルエンサーに「愛用している」などと自分のSNSに書きこませ、ファンへの大きな影響を狙う…など。実際に問題となったケースではどれも広告料が支払われていた、ということなのです。
SNS上の書き込みは、一括的に管理する機関がなく、メディアも無数に存在するのでなかなか実態を把握することが難しい状況があります。また通常の広告を打つより一般的に安価に実施できてしまうという現実が、ステマがはびこる要因にもなっています。
ステマと言われないために
上述しましたがインフルエンサーのSNSの書き込みにしても、ネット上の記事にしても、そこに広告主からの依頼があった場合は、必ず【PR】【広告】【プロモーション】【AD】 などの表記をするよう、関連する人々が働きかけることがまずは必要です。それぞれのメディアのフォーマットに溶け込む形で通常記事のように制作されながらも、きちんと広告表示をするネット広告を今は「ネイティブ広告」と言ったりします。
ただ、口コミの評価の作為的な投稿などについては、その行為自体を広告主が実施・依頼しないという以外は方法がないのが現状です。
Tips 広告料を支払って掲出される記事には、必ず広告表記をつける
ステマの規制
問題視されるステマのパターン
どのようなものがステマとして問題視されるのでしょう。1つの典型が、あたかも個人の書き込みのふりをして、商品やエンタメなどの感想を有料でSNSの記事や情報サイトの書き込み欄にアップするよう依頼するケースです。もちろんメーカーや興行主が個人に「商品の感想を書いてください」と依頼すること自体は違法ではありません。問題は、有料で発信側に都合のよい内容を書いてもらっているのに、個人の感想のごとく装っていることです。現状、法規制がなくとも、発覚すると、ネット内で炎上して発信者側にとってはかえってマイナスになることもあります。前述の通り、直接に書きこむのが個人であれ企業であれ、対価を受け取って書き入れる場合は、その記事内に【広告】【PR】などの文言をいれるなどの対策が必要です。
さらにエスカレートして、ある商品やサービスについて、「とても得をした」「思わず追加注文!」などとウソの書き込みをするものもあります。ネットで影響力を持つ有名人に依頼するなどして販売につなげるパターンで、消費者をだましているわけですから悪質なものは現行法でも詐欺罪として立件されます。ウソはだめ、というのは別にステマに限ったことではありませんね。
取り締まる規制
ステマについて、現状、明確に取り締まる規制はありません。しかし、消費者庁の発表する「インターネット消費者取引に係る広告表示に関する景品表示法上の問題点及び留意事項」にて次のような一文があります
【商品・サービスを提供する事業者が、顧客を誘引する手段として、口コミサイトに口コミ情報を自ら掲載し、又は第三者に依頼して掲載させ、当該「口コミ」情報が、当該事業者の商品・サービスの内容又は取引条件について、実際のもの又は競争事業者に係るものよりも著しく優良又は有利であると一般消費者に誤認されるものである場合には、景品表示法上の不当表示として問題となる】
問題点として明記されていることから、ステマにかかわる法規制が厳格にされていく可能性が大きくなっています。
Tips ステマのケースは様々。現状明確な法規制はないが今後厳格化されていく可能性がある
ステマの原因とリスク
ステマはなぜいけない
上述の消費者庁の指摘にもあるように、実際の商品より著しく優良であるかのごとく、第三者を使って内容を語らせること自体が消費者をだますことになる、という根本的な考え方があります。ただその背景にはだれもが簡単にステマに参画できるネット社会の状況があるでしょう。冒頭のサクラの事例であればせいぜいその場にいた十数名のお客さんが影響を受けるだけですが、今では口コミよっては何十万規模のユーザーがだまされる可能性がある。その波及効果の大きさが問題視されているのです。
関連する事業者の意識
またステマがはびこる原因として、そこに携わる事業者の意識の問題もあると言わざるを得ません。2022年9月に実施された消費者庁の「第1回 ステルスマーケティングに関する検討会」では関連する企業やインフルエンサーへのアンケートを行ったところ、「世の中の案件はすべて広告案件なのに、なぜ広告と書く必要がある?」という意識の広告主がいました。また、インフルエンサーへのアンケート調査でも、全体の41%はステマの依頼が来たことを認め、うち約45%がその依頼を受けていたといいます。
ともなうリスク
ステマは確かに短期的な成果を上げるには有効な手段かもしれませんが、それが明るみになった場合、払う代償も大きくなります。消費者や同業者、競合他社などからの告発により炎上も多発しています。いったんそのようになれば会社や個人としてこれまで築き上げてきた信頼を一気に失うことになります。見る目の数が多くなる分、摘発もされやすくなるわけで、慎重な判断が今後ますます必要になってくると思われます。
Tips 短期的な成果にとらわれず、事業の信頼性を担保する広告活動が必要
まとめ
欧米などにおいては既にステマに関する罰則が厳しく制定されてきていますが、日本にはまだ明確な法規制がないことは先に述べました。一方で、2021年、あるメーカーの行ったステマ案件に対し、消費者庁が景品表示法に基づく措置命令を出したことは話題になりました。おそらく日本でも今後この動きが活発になってくると思われます。とはいえまずは広告主、広告会社、媒体社、インフルエンサーの4者が互いに意識を高めて、不正な表現になっていないか、信頼性の自己チェックをすることが大切でしょう。
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