次々と新しい言葉が出てくるマーケティング領域。気が付けば周囲の人が普通に使っている用語の意味が今一つはっきりとわからない、なんてことありませんか?また、「思っていたのと違う意味で使われている」とか「以前は別の言葉で同じ内容を表現していたのでは?」など、時代背景によって使われ方が変わった用語にもよく出会います。まさに「言葉は生きている」ということですが、戸惑うことも多いのが実際のところでしょう。
ここではその中で、「セグメンテーション」と「ターゲティング」という言葉をとりあげました。自社の経営資源を最も効果的に活用するには、その経営資源をどういった顧客層に振り向けるのかの意思決定が最も重要です。どんな顧客セグメントをターゲットとしてマーケティング活動を実施するのか、その基盤となるのがセグメンテーションとターゲティングです。
セグメンテーションとは
一定のマーケティング施策・活動に対して、同じように反応するグループごとに切り分けることをセグメンテーションといいます。
消費者のニーズは多様ですから、万人向けの商品・サービスは現実にはなかなか存在しません。逆に全ての商品・サービスをオーダーメイドにするのも非現実的です。そこで、セグメンテーションによって、自社のマーケティング戦略上重要な顧客セグメントを見極め、その重要なセグメントをターゲットとして、マーケティング活動を実行する必要があります。
セグメンテーションの切り口・軸
不特定多数の消費者をいくつかのグループに分類するセグメンテーションを行う際、顧客の属性・価値観・行動などの共通項でグループ分けをします。以下に、いくつかの切り口を挙げます。
デモグラフィックな軸
性別や年齢、家族構成、職業、所得水準などがセグメンテーションの切り口として多く活用されます。こうしたデモグラフィックな軸は、市場規模が把握しやすく切り分けが比較的明快であるといったメリットがあります。
しかし、ライフスタイルが多様化している現在では、デモグラフィックな軸でのセグメンテーションだけでは、共通する購買行動をもったグループを発見するには不十分な場合があります。
地理的な軸
温暖な地域と寒冷地では生活に必要な設備や製品が違う、関東と関西では味の好みが違う、公共交通機関を多く使用する地域と一人一台クルマを持つ地域では人の移動導線が違う、など地理的な要因で消費行動が異なります。こうした地理的要因がセグメンテーションの切り口になります。
心理的な軸
金融商品を選択する際、ハイリスクを承知でハイリターンの金融商品を選ぶのか、逆に利回りは期待できなくてもリスクの少ないものを選ぶのか。家電商品を選ぶとき、なじみのあるブランドを好むのか、ブランドは気にしないのか、など、その人のパーソナリティや価値観など心理的な側面をセグメンテーションの切り口とします。
行動面の軸
購買に関連するデジタルデータの入手が容易になったことで、消費者の実際の行動をセグメンテーションの切り口に取り入れることが増えています。自社のECサイトで購買経験のある人だけに向けた施策を実施する、いくつかの商品の詳細情報まではアクセスしたが購入に至っていない人だけに焦点をあてた企画を立案するなどの例です。
Tips 【セグメンテーション】従来のデモグラフィックだけでは、足りない!
ターゲティング
上記のようないくつかの軸を用いてセグメンテーションを行い、各グループの特徴がわかったら、自社がどの層を対象にするのかを決定します。どのセグメントが自社のターゲットとして魅力的か、以下のような側面から考察します。
規模
市場規模の大きさを検討します。大きいほうが魅力的ですが、規模だけでは決定できません。
成長性
今は規模が小さくても、これから大幅な成長が見込める市場であれば、その成長率も検討します。
競合状況
規模が大きい市場や成長率の高い市場には、多くのライバルがいて競争が激しい場合が多くあります。そうした競合状況では、マーケティングコストが多くかかります。
優先順位と波及効果
いくつかのセグメントを自社ターゲットとする場合、どのセグメントがより重要なのか、その優先順位を検討します。例えば、その市場でいち早く新商品・サービスを使用し、評価をSNSで発信する影響力のある層からアプローチするといった優先順位を検討します。
リーチできるか
有効なコミュニケーション手段があるセグメントか、そのセグメントへのアクセスの難易度を考察します。
反応が測定できるか
売上の良し悪し、評価の高低やその理由、どのセグメントには効果があって、どのセグメントには効果がないのかなど、実施するマーケティング施策の効果をどの程度測定できるかも考慮しなければなりません。
Tips 【ターゲティング】市場規模の情報だけでは、足りない!
まとめ
ご覧のように、ここに取り上げた「セグメンテーション」と「ターゲティング」という二つの言葉は、マーケティング活動の上で表裏一体のものだということがわかります。セグメンテーションによってターゲット顧客を選択することは、マーケティング活動を方向付ける重要なスタート地点です。自社の経営資源をどういった層に振り向けるのか、中長期にわたって影響を及ぼします。
しかし、環境変化によって顧客ニーズが急激かつ大幅に変化する場合もあります。顧客の変化を常にとらえ、自社のセグメントやターゲット顧客の見直しが必要ないか、定期的にチェックする活動を自社のマーケティングプロセスに取り込んでおくことが重要です。