IT技術の進化により、マーケティング領域で使われるメソッド、ツールも大きく変わってきました。いまでは毎日のように新しいマーケティングのメソッド、ツールが発表され、開発競争は日増しに激化しています。ここでは、これら数多くのメソッド、ツールにどのようなものがあるか、マーケティング戦略にどのように活用していくことができるかについて紹介します。
消費者を理解する
ビジネス上の課題に取り組むとき、そのすべての出発点となるのが、対象のターゲットに関するインサイト(洞察)を得ることです。テクノロジーの進化によって消費者を理解するためのメソッド、ツールは大きく発展してきました。伝統的な消費者調査においても、テクノロジーを活用することで、短期間に安価で大量の調査対象者から情報を得ることができ、定量的なデータを収集することができるようになりました。
また、オンラインメディアでの消費者の様々な行動から生成されるデータを分析することで、消費者行動を深く、精緻に理解することができるようになりました。
さらには、生体反応を活用した最新の機器を用いることで、消費者の反応を深く理解することができるようになりました。このように、消費者を理解することで、以下のようなベネフィットを得ることができます。
・ターゲットの最新の情報行動をファクトで捉え、ビジネス拡大へのヒントや気づきを得る。
・ターゲットとのコミュニケーションで有効となるメディア、デバイス、メッセージを知る。
・ターゲットのマインド(心理)まで踏み込んだ、全く新しいマーケティング手法を得る。
ここでは、そのための具体的なメソッド、ツールについて紹介します。
統合データベースの構築/活用
多種多様なデータを取得することができるようになり、これらのデータを横断的に分析できるような巨大な統合データベースが活用されています。
例えば、電通のPeople Driven DMPは、cookie等のオーディエンスデータに加えて、スマートフォン由来のオーディエンスデータやテレビの実視聴ログデータ、購買データ等を人(People)基点で繋いだ全ファネルの統合プラットフォームです。このような巨大なデータから、消費者の行動を深く理解することができます。
AI
巨大なデータベースの存在と共に注目されるようになったのがAIです。2010年代前半から訪れた第三次AIブームは、ディープラーニングをはじめとする基礎技術の発展にとどまらず、既に様々な領域でビジネスに活用されはじめています。
それは単なる業務の効率化や予測精度の向上に加えて、さまざまな業種業界においてビジネスそのものの変革を可能にし、社会変化のきっかけになっています。
電通にはAI MIRAIという最先端のAIに関するノウハウと、社内外のネットワークを結集した、AIに特化した全社横断プロジェクトチームが存在します。
このチームによって開発されたツールでは、AIの学習手法のひとつであるディープラーニング(深層学習)を用いることで、高精度にテレビ視聴率を予測するシステムである「SHAREST_RT」や、AIを用いた自然言語処理技術を活用した広告コピーの自動生成ツールである「AICO」、また、AIを用いて広告を要素分解し、広告配信結果と紐づけることで、どういった要素が広告効果を引き上げているのかを明らかにしてオンラインクリエイティブを評価・自動生成するツールなどがあります。
生体反応
昨今のスマートウオッチに代表されるようなウェアラブル端末によって取得できる心拍数や運動のデータ、また広告を見ているときの瞳孔の反応や脳波の変化、さらには発汗量による精神的高揚感の測定など、様々な生体反応を測定する技術も大幅に進歩しています。生体反応によるデータは、従来の消費者に聞くタイプの調査と異なり、無意識での反応を測定することで、より消費者の「本音」に近い情報を得られるのではないかと期待されています。
Tips 「データ」「AI」「生体反応」で、より深い消費者の行動分析が可能になる
消費者に伝達する
消費者を理解するだけでなく、消費者に対してコミュニケーションを行う際にも、新しい技術が活用されています。
例えば、デジタル運用型広告では、最先端のテクノロジーを活用し、複数のデータを組み合わせて、効率的に、継続的に、その企業にとっての優良顧客をwebサイトに誘引する設計をします。電通では、テレビ広告等のマスメディア広告担当と連携し、市場から優良顧客になりそうな潜在顧客を見つけだし、企業の優良顧客になるお手伝いをしています。
また、ダイレクトマーケティングでは、ビッグデータを用いることにより、「販売件数」「会員獲得数」「問い合わせ件数」などの数値を広告効果とみなし、そこに至る生活者一人ひとりの行動履歴を可視化させることができます。
電通の「レスポンスコネクター」はCM1本ずつに対して、直後のレスポンスKPI項目と紐づけすることにより、テレビメディアの効果を細かく検証することを支援するツールです。
Tips 消費者への伝達にも新技術
まとめ
マーケティング領域では、今後も新しい技術を活用したメソッドやツールが開発され続けていくことが予想され、その開発のスピードはさらに加速していくことでしょう。マーケティングの目標を明確に定め、その目的にあったメソッドやツールを選択することで、従来には無かったスピードと規模で、新しいチャンスをつかむことができます。