芸能人・タレントが出演するテレビCMや屋外広告をよく目にします。企業のイベントなどに参加してもらうケースもあります。知名度の高い芸能人をキャスティングと、やはり出演している広告の認知度も高まることが期待できます。この記事では、芸能人・タレントをキャスティングする場合の仕事の進め方や注意点について解説していきます。
芸能人・タレントへの広告出演依頼は、どのように行うのか
芸能人・タレントと言ってもいろいろな人がいます。テレビのバラエティ番組に出演しているタレント、お笑い芸人、映画・ドラマ・舞台に出演する俳優や女優、ファッションモデル、頻繁にメディアに登場する大学教授やスタイリストなどの文化人やスポーツ選手など多岐に渡ります。最近ではインターネット上だけで活動するユーチューバーやインスタグラマーもいて、広義では芸能人・タレントに含まれます。広告業界の通念では、芸能事務所に所属している人(個人事務所含む)が芸能人・タレントに該当すると思われます。
仕事を依頼する際には、まず芸能事務所に直接連絡をするか、もしくは専門的に仲介をしているタレントキャスティング会社に相談をします。タレントキャスティング会社に依頼をすると仲介する手数料は発生しますが、契約に関連するサポートを受けられ、スケジュールや費用の交渉なども窓口となってくれるため、トラブルを減らすことができます。当然ですが、芸能事務所との強固なリレーションがあるかが重要なポイントとなるため、選定時には過去の実績などを確認してみると良いと思います。以前は複雑な業界内のローカルルールが存在しており敷居の高さがありましたが、最近では芸能事務所もホームページ上でお問い合わせフォームを設置するなど、気軽に相談ができる環境が整ってきています。誰に何をしてもらいたいのか、目的を明確にしてから連絡するようにしましょう。
重視するのはイメージか、影響力か
芸能人・タレントに仕事を依頼する目的はさまざまです。企業やブランドの顔になるようなイメージがマッチした人を選定するか、エッジの効いた発言に注目が集まりやすい影響力のある人を選定するか、重視するポイントを明確に決めておく必要があります。当然イメージが良くて影響力も兼ね備えた人がいればベストです。しかし、SNSの普及により芸能人・タレントのパーソナリティが明らかになりやすい現代では、イメージを守りながらエッジの効いた発信を続けていくことは難しくなってきています。
契約期間
まず、最初に決める必要があるのが契約期間です。テレビCMへの出演などは最低でも3ヶ月からの契約で、トップクラスの芸能人・タレントの場合は年間契約を条件にされることもあります。一方でPRイベントにゲスト出演してもらうだけの場合は、契約期間と呼べるのは1日だけで、いわゆるスポット契約となります。契約期間が長い方が依頼できる範囲は広がりやすく、商品を実際に利用したり、パッケージに写真を使用したりするなど、イメージキャラクターとしての活動をしてもらいやすくなります。一方でスポット契約だと、商品を手に持てなかったり、商品についての発言が限定されたりするなど、範囲を制限されることがあります。
費用
芸能人・タレントの契約に明確な料金表があるわけではありません。契約期間、稼働内容と稼働時間及び回数、露出するメディアの範囲、競合排除などの制限で、総合的に判断されて決定することが一般的です。おおよその予算の目安を芸能事務所側に先に伝えるケースもありますが、芸能事務所からこれまでの実績をもとにした見積もりが提示される場合もあります。タレントキャスティング会社や広告会社が契約を仲介する場合には、手数料も発生します。トップクラスの芸能人・タレントだと年間契約で数千万円かかることもありますが、ある程度認知度が高くてもスポット契約で1回のPRイベント出演費が数十万円ということもあります。なお、芸能人・タレント本人がヘアメイクやスタイリストを指名する場合が多く、そのスタッフの費用も発生することを、念頭においておく必要があります。
本人の稼働内容、拘束時間と回数
実際に芸能人・タレント本人が撮影やイベントなどで稼働する内容を決めます。メイクなどの準備も含めた拘束時間と、それが何日間発生するのかを定めます。CM出演であれば撮影にかかる日数、PRイベントであれば登壇する回数を決定します。遠方に移動する必要がある場合は、その移動時間も加味することが一般的です。動画の撮影があるのか、スチール撮影だけなのかといった制作物の内容も、できる限り事前に決めておくとスムーズに進行します。
露出するメディアの範囲
テレビ、新聞、雑誌、ラジオといったマスメディアや、インターネット上のどの範囲で、芸能人・タレントのビジュアルが露出されるかを定めます。インターネット上で広告出稿など行う際は掲載先が多岐に渡りますが、後のトラブルを回避するためにも、可能な限り明確に範囲を明文化しておきます。
契約期間中の競合排除
例えばA社のビールのテレビCMに出演しているのに、同時期にB社のビールのテレビCMに出演すると、生活者はどちらのビールをお勧めしているのかわからなくなり、混乱します。どちらも褒めている場合は、八方美人に映ってしまい、芸能人・タレント本人の信頼性を失う可能性もあります。そこで、競合に当たる企業や商品、ジャンルなどをあらかじめ決めて、契約期間内は広告出演を行わないように定めることがあります。ただし、あまりに範囲が広いと、芸能人にとっては他の企業の広告に関連する仕事が受けられなくなるため、契約料が高騰したり、契約そのものを断られたりする可能性も出てきます。1日PRイベントに出演するスポット契約の場合は、芸能人側が競合排除を行わないことを条件とする場合もあります。
SNS上でオフタイムに投稿を行う際に、競合商品を利用した写真を投稿してしまうこともあります。私生活にまで制約をかけることが果たして現実的であるのかは、芸能事務所も交えて、よく議論をする必要があります。トラブルが起きやすいポイントなので、十分に検討を重ねた上で、契約内容に具体的に盛り込むことをお勧めします。また、例えば自動車メーカーと広告契約をしている最中に芸能人・タレント本人が交通事故を起こすと、契約が解除になる場合などもあります。
ステマ問題と、回避するためのポイント
金品を受け取ってSNSに投稿していたにも関わらず、その事実を伏せていることが発覚すると「ステルスマーケティング(ステマ)」と言われて炎上することがあります。広告は広告であることを消費者に明確にわかるように明示する必要があり、アメリカでは法律で定められています。
また、テレビCMや新聞広告などにはメディアが定める基準を満たしているかの広告考査があります。景表法や薬機法など、広告にも深く関わるさまざまな法律があり、何でも自由に表現できるわけではありません。考査をパスして初めて広告を掲載することができます。
個人や専門知識のない人たちの判断で、広告であることを伏せて世の中に発信することは、実はとても危険なことなのです。そのために一般社団法人 日本インタラクティブ広告協会(JIAA)や、WOMマーケティング協議会(WOMJ)などの業界団体がガイドラインを定めています。それに準拠することで、ステマを回避することができます。
まとめ
芸能人・タレントは、広告の顔として欠かせない存在です。ビジュアルのイメージだけではなく、SNSによる影響力は日増しに強くなり、マーケティングプランニングの中心を占める重要な存在になっています。しかし一方で、人に対する依頼となるため明確なルールが存在していない部分も多く、丁寧な交渉と契約内容の明確化が大事です。積極的に活用するためにも、基本的なポイントを抑えておきましょう。
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