95%が「ビジネスにおいて文章力は必要」
「漢検」「文章検」を実施している日本漢字能力検定協会によりますと、テレワークを経験したことがあるオフィスワーカーのうちほとんどが「ビジネスにおいて文章力は必要」と認識しています。
あなたは、文章によるコミュニケーションが得意ですか。(n=534、単一回答)
(出所:「withコロナ時代のテレワークに関する意識調査」日本漢字能力検定協会 p6)
その一方で、自分は文章によるコミュニケーションが得意だとしている人は6割程度にとどまっています。
あなたは、文章によるコミュニケーションが得意ですか。(n=534、単一回答)
(出所:「withコロナ時代のテレワークに関する意識調査」日本漢字能力検定協会 p3)
そして、文章によるコミュニケーションが得意か苦手かで、テレワークで生産性が高まったかそうでないかに差が出ているようです。
あなたはテレワークを活用した結果、生産性が高まったと思いますか。(n=534、単一回答)
(出所:「withコロナ時代のテレワークに関する意識調査」日本漢字能力検定協会 p3)
ビジネス上のコミュニケーションは、ある程度同じ目標を共有したグループ内でのものです。しかしPRとなると、そうはいきません。未知の相手とのコミュニケーションだからです。
フリーランスとの協業の前に
そこで近年は、フリーランスのディレクター・デザイナーやライターを交えて広告やWebコンテンツの製作をする企業も少なくありません。
確かに、彼ら・彼女らはそういった技術やノウハウの提供を生業としていますので、表現力、文章力、言語力において経営者より優れていることは珍しくありません。
よって、全面的に頼りたくなってしまう気持ちも分かるのですが、自分たちの言いたいことを伝えて「良い表現を考えて欲しい」というだけでは、実は彼ら・彼女らは「最適な表現」を選ぶことはできません。
企業や商品のコピーを決定する方法のひとつとして、以下のようなものがあります。
全社参加の「理念」を先に
まずPRに必要なのは、商品を作ったりサービスを提供したりする社員の意識や行動にも、そのコピーが反映されることが重要です。企業理念とも呼べるものです。
この根幹がなければ、商品やサービスに良いコピーはつけられない、つけたとしてもうわべだけのものになってしまいます。
中小企業庁は、企業のあり方として今後は企業理念の全社共有を重視すべきとしています。具体的にはこのようなイメージです。
企業理念の全社共有のイメージ
(出所:「業績向上の仕組みづくりシリーズ② 企業理念の共有とビジョン(あるべき姿)の明確化」中小企業庁)
理念というのは、一部のトップから順に伝えられるものであってはならないということです。
確かに従来のこの方法では、伝言ゲームのようなことが起きかねませんし、現場社員からすると「押しつけられただけのもの」と感じられることもあります。
では、どのように全社参加で理念を構築していくか、ということになりますが、一例としては以下の方法があります。
とりあえず書き出してもらう
全社参加と言っても、「アイデアを出さない社員」は多く存在することでしょう。「うまく文章で表現できないから」というのがその理由の多くを占めると考えられます。
いまや就職活動のエントリーシートまでも他人から添削を受けるのが当たり前の時代ですから、若い世代はなおさらかもしれません。
しかし、自分で頭を使って手を使って書き出したものには、自分は従おうと考えるはずです。そこで「顧客に見せるわけではないので、下手でも何でもいいから書き出す」という作業をまずさせます。
社員ひとりひとりが、普段どういう意識で仕事をしているかを振り返る良いきっかけにもなります。
プロの仕事は「まとまりきれてないものをまとめること」
そこからが、フリーランスのディレクターやライターの出番なのです。
社員の数だけ違う文章や言葉が並びます。その中から「幹部が気に入ったもの」を選抜すると、トップダウンでしかないブランディングになってしまいます。
そうではなく、これを言い換え、まとめ、昇華させるのが「その道のプロ」の出番と考えて良いでしょう。
まず、同じ単語が何人もから出されていれば、それを拾います。そして、「似たことを言っている」ものを、さらに上位概念の言葉に置き換えていき、候補の数を減らしていきます。
実は文章力ではなく語彙力や言い換えのスキルを外部のディレクターやライターに求めるという形です。
全社の「考えていること」を包括するPRコピーはこのようにして生まれます。
この過程では、実は社内のひとりひとりの文章力はあまり関係ないということがお分かりいただけるでしょう。
逆に、「なんとなくこんな雰囲気」とだけ伝えても、プロはそれに対して語彙力を持ちすぎているため、どうして良いかわからないといった事情もあります。また、プロとはいえ他人であることには変わりはありませんから、他人の言葉を丸ごと借りたものを掲げるのが本当に良いことかを考えてみてください。
見た目や響きのかっこよさ、だけでは商品開発や販売、サービス提供の現場社員の具体的行動にはつながりにくくなってしまいます。
最適な言葉は、直接やっている人以外からは生まれない
企業活動では、ひとつの商品に関しても、開発、製造、営業、販売と、担当が違えばそれぞれに違う単語が出てきます。
それらを貫く言葉を模索するのがPRコピー作成の第一歩であり、そして全社が同じ意識を共有できる足がかりでもあります。別の部門の社員が考えていることの違いをお互い知ることもできるでしょう。
また、「モノ消費」から「コト消費」へ、そして「トキ消費」へトレンドが変化していくなかで、どのような切り口でも同じ考えが反映されている企業や商品にこそ消費者は惹かれていくことでしょう。
下手でも何でも、とりあえず言語化してみることは重要なのです。