Z世代女子(1990年代後半から2010年代前半生まれの女性)の消費を明らかにすべく、本連載では女の子向けプランニングチーム・電通GIRL’S GOOD LABが、Z世代によるZ世代のための超共感主義マーケティングを展開しているzzz.inc.と共同調査を行い、Z世代女子の意識や価値観を3つの消費行動に分けて明らかにしていきます。
第1回の「バズ消費」に続き、第2回のテーマは、Z世代女子の「推し消費」。
Z世代女子がアイドルやアニメの推しのためにお金を使う「推し消費」を盛んに行っているのはなぜなのでしょうか?
また、どういったジャーニーを経て「推し消費」を行うのでしょうか?
その秘密を探っていきましょう。
【第1回】
「売り切れ前に買わなくちゃ!」 Z世代女子を中心に巻き起こっている「バズ消費」とは?
欲しいから買うのではなく、応援したいから買う
もともとはオタク用語であった「推し」。
その言葉は広がりを見せ、Z世代女子の誰もが「推し」を持っている時代に突入しています。
映画「鬼滅の刃」の興行収入400億円突破にはZ世代女子の消費が寄与し、NiziUやJO1などのアイドル発掘オーディションもZ世代女子が中心となって社会現象を巻き起こしました。
そのほか他リアコ(アイドルや俳優にリアルに恋する)現象、「呪術廻戦」に登場する五条悟の人気ぶりなど、 Z世代女子が支えている消費がいくつもあります。
なぜZ世代女子は「推し消費」を行うのでしょうか?
インタビューを行ったところ、「推しのグッズが欲しいから買うのではなく、応援したいから購入する」といった意見が出てきました。
実際に、「アイドルやアニメなどの『推し』のためなら応援の気持ちで買い物をしてしまうことはありますか?」という質問について、経験がある(よくある、ときどきある)と答えたZ世代女子は72.3%に上ることが分かりました。
【図表1】アイドルやアニメなどの「推し」のためなら応援の気持ちで買い物をしてしまうことはありますか?
なぜZ世代女子は、推しへの応援購入を積極的に行うのでしょうか?
調査を行う中で、2つの理由が見えてきました。
まず1つ目は、「推しに貢献している/推しを応援している」といった実感が消費を通じて得やすくなっているからです。
例えば、前述の映画「鬼滅の刃」の興行収入400億円突破の際には、「煉獄さんを400億円の男にする」というファンの中で生まれた共通の目標達成のために、多くのZ世代女子が劇場に足を運びました。映画を見てお金を支払うことで、400億円突破に貢献している実感を得ていたようです。
また、クラウドファンディングの発展もあり、推しの誕生日や記念日に応援広告を出すことも可能になっています。
NiziUのリーダーであるマコさんが20歳の誕生日を迎える際には、ファンがクラウドファンディングを行い、新宿にある大型ビジョンに応援広告を掲出した事例もありました。
このように、自身の消費が推しに貢献している実感、もしくは応援している実感が得られやすいからこそ、Z世代女子は「推し消費」を積極的に行うようです。
2つ目の理由としては、コロナ禍で推しに直接会えないことが挙げられます。
特にアイドルなどの3次元の推しに見られる特徴ですが、これまではライブなどで直接会って声援を送ることができていた推しに、コロナの影響で会えない状況が続いています。
だからこそ、直接応援できなくても、推しのグッズを購入することで間接的に応援するZ世代女子が増えているようです。
また、TwitterやInstagramでは「#推しのいる生活」というハッシュタグを付けて、購入した推しのグッズを投稿しているZ世代女子も増えています。
こういった投稿を行うことで、改めて推しへの応援の気持ちを表明したり、同じ推しを応援している人とつながったりしているようです。
Z世代女子は推し情報をどうやって取得する?
それでは、Z世代女子はどこで推しの情報を取得するのでしょうか?
推しに関する情報を調べるときにどういった行動を取るか調査してみると、「Twitterで調べる」が83.2%、「Instagramで調べる」が77.7%、「YouTubeで調べる」が63.4%という結果になりました。
【図表2】アイドルやアニメなどの「推し」に関する情報を調べるとき
さらに調査をしていくと、ツールの使い分けも見えてきました。
まず、一番使われているTwitterについてインタビューを行うと、「情報がすぐに取得できる」「情報量が他のSNSと比べて多い」といった意見が挙がってきました。
Twitterで推しの情報を取得するZ世代女子は、Twitterならではのリアルタイムな情報と情報量の多さに魅力を感じ、Twitterを使用しているようです。
そのため、「推しの一次情報はTwitterから得る」といった意見も多く出てきました。
また、Twitterでは「推し専用アカウント」を持っているZ世代女子も多く、ファン同士のコミュニケーションも盛んに行っているようです。
一方、InstagramやYouTubeについてはTwitterよりもリッチなコンテンツを求めて使用するZ世代女子が多いことが分かりました。
Instagramでは推しが直接アカウントを運用しインスタライブを行っていたり、YouTubeでは推しのライブ映像やPV・オフ映像が盛んに投稿されていたりと、動画コンテンツに重きを置いた情報発信が行われています。
Twitterでは文字ベース・写真ベースの情報発信が行われているため、より上質な情報を二次情報として取得したい際に、InstagramやYouTubeを使用しているZ世代女子が多いことが分かってきました。
「推し消費」では金額を気にせず、即購入
それでは、推しの情報を取得した後、Z世代女子はどのような行動を取るのか、購買の仕方に注目して見ていきましょう。
まず、推しの情報を得てから購入するまでにZ世代女子は比較検討を行うのか、下記のグラフを基に分析していきます。
【図表3】アイドルやアニメの「推し」に関する商品・サービスについて、「吟味して買う/選ぶこと」と「衝動買いする」ではどちらが多いか
「いつも吟味してから買う」「どちらかといえば吟味してから買う」が合わせて約3割の回答なのに対し、「いつも衝動買いする」「どちらかといえば衝動買いする」が合わせて約5割の回答になっていることが分かります。
「推し関連のサービス・グッズについては、特に比較検討はしない」といった意見も出てきており、「推し消費」については、比較検討を行わずすぐに購入するZ世代女子が多いようです。
また、購入金額について、興味深い調査結果が出てきました。
【図表4】アイドルやアニメなどの「推し」のためならあまり金額を気にせず買い物してしまうと感じますか?
何と63.9%のZ世代女子が、推しのためなら金額を気にせずに購入すると回答しています。
衝動買いを行うことが多いにもかかわらず、金額を気にしない消費行動を取っているということで、かなり「推し消費」への意欲が高いことが分かります。
なぜZ世代女子は、推し関連のサービス・グッズに対して金額を気にせずに衝動買いをするのでしょうか?
推しへの応援といった意見も引き続き出てきましたが、自分の好きなもの・好きなこと・趣味の優先順位を上げて消費を行っているZ世代女子の姿が調査から見えてきました。
おうち時間をはじめとして、コロナ禍で時間にゆとりを持つようになったZ世代女子は、積極的に趣味にお金を投じることで、自身の生活や時間を充実させたい気持ちが芽生えているようです。
だからこそ、推し関連のサービス・グッズに出合った際には金額を気にせずに、衝動的に購入しているということが分かりました。
また購入場所については、衝動買いの要素が強いため、推しの情報をオンラインで取得し、そのままオンラインで即購入をするZ世代女子が多いという結果となりました。
「推し消費」を押さえる上での4つのポイント
ここまでZ世代女子の「推し消費」について分析してきましたが、「推し消費」におけるポイントをまとめていきましょう。
「推し消費」がZ世代女子を中心に爆発的に行われている昨今。
ぜひこのポイントを押さえながら、Z世代女子の「推し消費」にご注目ください。
次回のテーマはZ世代女子の「TikTok消費」。
Z世代女子がTikTokを通じて、どのような消費を行っているのかを明らかにしていきます。
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