「テレビCMを通じて、より多くの人々に自社の商品やサービスについて知ってもらいたい」
そう考えてはいるものの、テレビCMは費用が高いのではないかと懸念を抱いている人も多いのではないでしょうか。また、「予算内でテレビCMを制作したいけど、どうすれば金額を抑えられるかわからない」とお悩みの方もいらっしゃるでしょう。
そこでこの記事では、テレビCMの費用の内訳と相場、金額を抑える方法について、詳しく解説します。
テレビCMは、多くの人々に商品やサービスを伝える効果的な方法です。ぜひ参考にしてください。
テレビCM制作にかかる費用の内訳
テレビCM制作にはさまざまな費用がかかるため、予算や目的に応じてバランスを取りながら計画することが必要です。その内訳を見てみましょう。
テレビCMの費用は、放映費と制作費で決まります。
放映費
テレビ局にCMを放送してもらうための費用です。放送エリアや放送時間帯などによって価格が異なります。キー局などの人気番組や高視聴率の時間帯では、より高額になります。
制作費
CMの制作に関連する費用です。これにはスタッフの人件費、キャストやモデルの出演料、撮影機材やセットの準備費用、編集や効果音、音楽の制作費などが含まれます。CMの長さやクオリティによっても値段は変動します。高品質な映像や特殊効果を使用する場合、さらに多くの制作費が必要です。
放映費はCMの種類・放送局・視聴率によって変動する
まずは、テレビCMの放映費について紹介します。
放映費は、CMの秒数、放送する期間などによって値段が変動します。さらに、放送局やCMを流す時間帯の視聴率によっても金額が前後します。
種類、放送局、視聴率の3点を1つずつ詳しくみていきましょう。
CMには2種類ありそれぞれ値段が異なる
テレビCMは、タイムCMとスポットCMお2種類が存在します。
テレビCMを放送するときは、その時間の放送枠を購入しますが、これをバイイングといいます。
新たなテレビCMとして、15秒CMを1本単位で購入できる「SAS(Smart Ad Sales)」も登場していますが、ここでは、主流となっているタイムCMとスポットCMについてメリット、デメリットも踏まえて解説していきます。
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タイムCM |
スポットCM |
時間 |
30秒、60秒、90秒 |
15秒~ |
契約期間 |
2クール(6か月間) |
任意に設定(基本1週間以上) |
特徴 |
ターゲットを絞ったCM |
時間指定 曜日指定 地域指定 柔軟な設定が可能 |
タイムCM
タイムCMは、ある番組のスポンサーとして放映されるCMのことです。
例えば子供向けお菓子のCMを制作した場合、大人が見るようなドラマやバラエティ番組ではなく、子供が見る人気アニメ番組にCMを打つ方が、より効果のあるCMになることは言うまでもありません。
このように、商品やサービスとCMを打つ番組のターゲット層が一致している場合、タイムCMを採用します。
動画の時間は、30秒、60秒、90秒から選べます。そして、契約期間は原則半年間(2クール)です。
ターゲットを絞った効果的なCMを放映できる点がメリットですが、2クールという期間が長い契約となり、短期間のキャンペーンや期間限定のCMには不向きといったデメリットもあります。
スポットCM
タイムCMのように期間2クールといった制約がなく、キャンペーンや期間限定CMに多く利用されている方式がスポットCMです。
スポットCMは、CMの時間が基本15秒(30秒以上も購入可)です。さらに、特定の地域限定でCMを放送するといった指定もできます。
時間指定や曜日指定を行い、土日と、平日のゴールデンタイムにCMを流す時間枠を購入するといったことも可能です。
CMを放送する番組を指定して、タイムCMのようにターゲット層を絞ったCMを放送することができませんが、スポットCMは柔軟な設定でコストも安く放送できます。
放送局によって値段が異なる
テレビCMの値段は、放送局によっても変動します。放映費を上から高い順に並べると、キー局、キー局、ローカル局となります。
キー局とは、日本テレビ、テレビ朝日、TBS、テレビ東京、フジテレビのことで、準キー局、ローカル局に番組の送り出しを行っています。そして、東京都内の5局がキー局となっているため「在京キー局」とも呼ばれています。
キー局のテレビCMの放映費は、全国向けの番組を制作しているため高額です。
準キー局とは、読売テレビ、朝日放送テレビ、毎日放送、テレビ大阪、関西テレビのことです。大阪に本社を構え、関西での視聴率や影響力が高く、その地域に焦点を絞った番組やニュースを提供しています。
テレビCMの放映費はキー局に比べると、地域が限定される分、抑えることができます。
ローカル局とは、ある特定の地域を放送エリアとしている放送局のことです。主に、キー局が送り出した番組を放送していますが、地域の天気予報やニュースなどはローカル局が制作して放送しています。
例えば、広島テレビは日本テレビをキー局にもち、東海テレビ放送はフジテレビをキー局に持つなど、ローカル局はキー局の系列に属しています。
一定の地域に限定されるため、テレビCMの放映費も準キー局と比べても低いです。
キー局 |
準キー局 |
ローカル |
日本テレビ |
読売テレビ |
- |
テレビ朝日 |
朝日放送 |
- |
TBS |
毎日放送 |
- |
フジテレビ |
関西テレビ放送 |
- |
テレビ東京 |
テレビ大阪 |
- |
全国向けの番組を放送 |
一部対象地域を放送エリアに持ち、キー局の下に位置 |
キー局が送り出した番組を放送しており、準キー局よりも放送エリアは狭い |
視聴率によって金額が異なる
ここまで、CMの種類、放送局によってテレビCMの金額が異なるというお話をしてきましたが、もう一つ放映費を決める重要な要素が視聴率です。
テレビCMは、視聴率1%につき○○円という決め方をしています。
時間帯や番組によって、視聴者数が多くなり視聴率が高くなるほど放映費も高額になります。
朝方、昼間のテレビを見る人が少なくなる時間は比較的安く、夜19時から22時のゴールデンタイムは視聴者が増えるためCMの放映費も高いです。
制作費の内訳
続いて、テレビCMの費用を決めるもう一つの要素である制作費についてです。
制作費も大きく3つ(企画・プランニング、撮影、編集・MA)に分けて、1つずつわかりやすく解説します。
企画・プランニング
テレビCMの企画・プランニングを行う際も費用が発生します。
具体的には、CMのコンセプトやメッセージを考えるために、広告代理店や制作会社に支払う費用やCMの映像やシーンの流れを図解化したストーリーボードの作成に伴う費用です。
CMの長さによって企画・プランニング費用を決定している企業もあります。
この企画・プランニング工程では、まずオリエンテーションを行い広告代理店に制作するテレビCMの目的・狙いを共有します。そして、広告代理店が企画を行い、制作会社とストーリーボードを作成するといった流れになります。
撮影
テレビCMの撮影段階でももちろん費用が発生します。
タレントを採用するための出演料やナレーションを入れる場合はナレーションの出演料によっても金額が変わります。
人気タレントはCM出演料が高いといった話を1度は聞いたことがあるのではないでしょうか。1クール毎や年間契約で、契約内容によってかかる金額も異なります。
また、動画を撮影するために必要となるスタッフの招集や撮影場所を確保する費用も含まれます。
ドローン撮影を行ったり、複数のカメラマンや照明を準備する大規模な撮影ではその分費用も高くなるでしょう。
編集・MA
制作費の3つ目の要素が、編集・MAの費用になります。
これは、CMに使用するBGMや効果音を制作するための費用です。オリジナルの音楽を作曲する場合、特定の楽曲の使用権を取得する場合など費用は異なります。
そして、効果音やテキストの追加などに関連する費用や修正にかかる費用も必要です。
MA(Multi Audio)とは、編集した動画にBGMやナレーションなどの音を加え、音質やバランスを調整、音の最終仕上げを行うことでCMの完成度を左右する重要な要素です。
テレビCMの費用を安くする方法
テレビCMの費用や制作の流れが理解できたのではないでしょうか。
ここからは、テレビCMを安くするための方法について解説します。予算内にCMを打つことを任せられた方はぜひ参考にしてください。
自社で企画やプランニングをする
自社でテレビCMの企画やプランニングを行うことは、制作費を削減する効果的な方法の一つです。
広告代理店や制作会社に依頼せずに自社で行うことで、コンサルや企画費を節約することができるため、自社内でテレビCMに深い知識を持った人材がいれば、積極的に登用しましょう。
ここで注意するべき点は、客観的な視点でテレビCMを作成することが難しくなる点です。
広告代理店に依頼するメリットは、CMに関する専門的な知識を活用できる点と第3者目線でPRを行うことができることですが、自社で行うとこのメリットを得られなくなります。
放映費がおさえられるローカル局から放映する
先ほど、テレビCMの金額は放送局によって異なると説明した通り、キー局や準キー局でCMを放映するより、ローカル局から放送することで放映費を抑えることができます。
ローカル局でCMを打つことによるメリットは他にもあります。
具体例としては、地域を限定したローカル局のほうが他企業との競争が少なくCMを放送する回数が増える可能性が上がること、地域密着型のCMにすることでターゲット層を明確にでき親近感や共感を生み出しやすい点が挙げられます。
撮影は屋内でする
屋外での撮影を予定している場合は、その撮影を屋内で行うことでコストを削減できる可能性があります。
天候に左右される場合は、スタッフのスケジュールを押さえるためにさらにコストがかかりますが、屋内での撮影では、場所や天候に左右されずに制作を進めることができます。
屋外の撮影に比べ、屋内での撮影では、外部ロケーションやセットの用意にかかる費用や手間を削減できる傾向にあります。
ただし場所によってはスタジオレンタル費用が高いケースもあります。あらかじめ確認するようにしましょう。
出演キャストの見直しやアニメーション演出を検討する
有名な俳優やタレントの起用には高額な出演料がかかります。
社内のスタッフを起用するなど出演する人を見直すことで費用を削減できます。
実力やイメージにこだわりすぎず、コンセプトやメッセージに適した人物を選ぶことが重要です。
また、アニメーションやグラフィックを活用することで、映像の演出やストーリーテリングを実現することも可能です。CM出演者を最小限に抑え、アニメーションやグラフィックで映像を補完する手法も検討しましょう。
ただしCGを多く利用するなど、アニメーションにこだわり過ぎると、通常の撮影に比べて費用が高くなる可能性もあるため利用するシーンも検討が必要です。
テレビCMの費用対効果を考えるヒント
ここまで、テレビCMの放映費や制作費用を抑えるための方法について解説してきましたが、CMを打つ際に重要になるものが「費用対効果」です。
最後に、この費用対効果を高めるために考えるべき2つのことについてお話しします。
ぜひ参考にしてください。
購買意欲を高めるための「間接的効果」を考える
テレビCMは、商品やサービスへの興味や関心を引き起こす役割を果たします。しかし、直接的な購入行動を促す手段ではありません。そのため、間接的な効果を考える必要があります。
例えば、同じテレビCMに何度も接触することで、視聴者は徐々に興味を持つようになり、最終的には商品やサービスを気に入って購入する場合があります。
テレビCMの目的は、視聴者に商品やサービスに対する興味や関心を喚起することです。視聴者が商品やサービスについて知識を深め、購入を検討するようになるためには、CMの効果的な訴求やメッセージが重要です。
したがって、テレビCMを制作する際には、直接的な購入への効果だけでなく、間接的な影響やブランドイメージの形成にも注目し、効果的なCMを作り上げることが重要です。
GRPで効果測定
テレビCMから得られる効果は直接的ではないため、CMの効果を測定するには他の指標や調査手法を活用する必要があります。
その指標の一つが、GRP(Gross Rating Point)になります。
GRPは、【視聴率×CMの本数】の計算式で導かれ、テレビCMに対する効果やどのくらいの人が見てくれたかを知ることができる重要な指標です。
この記事の前半で紹介したスポットCMの放映費は、【GRP×視聴率1%ごとの費用】によって決められています。視聴率10%のドラマの中で3本特定のCMが流れた場合、そのCMは30GRPという計算をします。この数値が高いほど、より多くの人がテレビCMに触れているということです。
印象に残る効果の高いCMを作成することが最も重要ですが、CMを作成したうえで、より効果の出る方法としてGRPを有効活用していきましょう。
まとめ
テレビCMは、多くの人々に商品やサービスを伝える効果的な広告方法です。しかし、テレビCMを制作・放送するには、それなりの費用がかかります。テレビCMの費用の内訳と相場、金額を抑える方法について、詳しく解説しました。
最後に、GRPについて記載しましたが、GRPが高いほど、より多くの人にテレビCMが届き、商品やサービスのアピールができます。テレビCMを出すときは、GRPを効果的に活用していきましょう。