テレビCMを放送する際に避けては通れない「CM考査」の基準や審査基準を解説!

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テレビCMを放送する際に避けては通れない「CM考査」の基準や審査基準を解説!

リード文

テレビCMで商品やサービスを宣伝する場合、テレビ局によるCM考査があります。CM考査には、業態考査と表現考査という二段階の考査があります。

前者は広告主の事業内容や商品などがCMとしてふさわしいものかを確認するものです。
後者はCMの内容そのものに関するもので、テレビ視聴者にとって不利益と考えられる映像やナレーションを規制するものです。

CM考査は最終的にはテレビ局が判断しますが、一定の基準があり、各々の基準や具体例を解説していきます。

CM考査とは?

CM考課とは

テレビCMを放送する場合、テレビ局によるCM考査を事前にパスしなければなりません。テレビ放送は政府からの許認可事業であり、国民に対し、正確で役立つ情報を届けることが求められています。CMでも同様に表現の正確性、倫理観など一定基準をクリアすることが必要です。

広告主の業態やサービス内容、表現などが日本民間放送連盟の放送基準、テレビ局独自の基準、関連法案のほか、業界の自主基準や公正競争規約などに抵触していないかを確認します。

考査は各テレビ局の考査部、あるいは外部の第三者機関などです。結果が出るまでに、長い場合2カ月以上かかることもあるので、時間的にも余裕をもって準備しましょう。

CM考査は大きく2種類|それぞれの審査基準とは?

2つの考査

CM考査には、主に広告主そのものに関する業態考査と広告の表現内容に関する表現考査の2種類があります。

業態考査は主に、広告主の業態・商法・商品の3つ(つまり、どのような事業でどのような商品をどのように販売しているか)を審査します。

表現考査は、CMのストーリー、根拠資料(CM内容に関する根拠や調査資料)、キャンペーン内容等(関連法令や業界基準に抵触しないか)が審査されます。

それぞれの審査基準について詳しく見ていきましょう。

業態考査の基準

業態考査は広告主の業種や事業内容が、テレビCMを流すにふさわしいかどうかを確認します。

事実に正確に役立つ情報が求められるため、科学を否定する霊感商法や催眠商法などを展開していないか、関連法に抵触する商品やサービスを扱っていないかなどを調査します。

テレビ局などが制定するレギュレーションを事前に確認するか、広告代理店に一度問い合わせてみましょう。

業態考査にかかるおおよその期間

テレビ局によって考査時間には幅があります。また、同じテレビ局でも時期によって差があります。

キー局は特に審査に時間がかかる傾向にあると言われています。また、広告審査会で考査する場合は1カ月半から2カ月程度かかる場合もあります。

CM表現考査の基準

主にCMの表現を審査します。視聴者に真実を伝え、内容が役立つものである必要があります。表現考査に当たっては大きく以下の4つの点に関して確認しています。

1:放送基準に抵触していないか?
2:各種法令に違反していないか?
3:業界の自主基準、公正競争規約等に違反していないか?
4:その他視聴者に不利益を及ぼさないか?

表現考査は業態考査に加えて、1週間から2週間を要します。また、場合によって、内容や表現・演出の改稿を求められることもあります。その時は、改稿後の表現等が受理されなければ、放送できません。

虚偽・暴力的・性的表現など「放送基準」に触れていないか

児童・青少年等への配慮が必要なものや、風紀上好ましくない表現や視聴者に不利益を及ぼす可能性のある表現などを放送基準に照らして審査します。禁止されている主な表現は以下の通りです。

・虚偽・誇張など事実と異なる情報
・誇大表現(事実に反する場合)
・他の企業や商品を誹謗中傷する表現
・性的な表現
・必要以上に商品に対する期待を煽る表現
・錯覚や誤解を招く表現
・暴力的・残虐な表現
・閃光や光の点滅
・サブリナミル的表現(通常の状態では感知できない映像や音声を挿入し、何らかのメッセージを伝えようとする)
・契約者以外の広告主の広告

などです。

薬機法・食品表示法など「各種法令」に触れていないか

他の広告媒体と同様に、テレビCMも各種法令に違反していないかを確認しています。例えば、スーパーなどのCMで、「大バーゲン、50%オフ」と謳っているのに、実際は一部の商品だけ50%オフだったような場合や、分譲マンションで、「2LDK2000万円~」とだけ表現する場合は、おとり広告と見なされ、最高価格や最多価格帯を出すように改稿が求められます。以下、基準とされる主な法令を記載します。

表現考査にかかる主な法令一覧
・不当景品類及び不当表示防止法(通称景品表示法)
・不当競争法
・特定商取引法
・消費者契約法
・食品表示法
・薬機法(医薬品等適正広告基準を含む)
・健康増進法
・貸金業法
・利息制限法
・銀行法
・割賦販売法
・老人福祉法
・介護保険法
・児童福祉法
・建設業法
・宅地建物取引業法
・職業安定法
・公職選挙法

業界の定める基準や「公正競争規約」に触れていないか

広告主の業界によって、CMの表現に自主規制や公正競争規約を設定している場合があります。

例えば、化粧品では日本化粧品工業連合会に「化粧品等の適正広告ガイドライン」があります。そこでは、例えば「肌の疲れ」という表現で、表現できない例 として、「肌の疲れを癒す」、「顔に出た仕事の疲れに」他が挙げられています。自分の属する業界団体などのガイドラインに注意してCMを制作しましょう。以下主な業界の自主規制等を列挙しておきます。 

業界 自主基準等
自動車 自動車公正取引協議会…自動車業における表示に関する公正競争規約及び施行規則
医薬品 日本OTC医薬品協会…広告審査会による自主審査あり
貸金業 日本貸金業協会…広告審査小委員会による自主審査あり
酒類 酒類の広告審査委員会「酒類の広告・宣伝及び酒類容器の表示に関する自主基準」

視聴者に不利益を及ぼさないか

上記の基準に該当せずとも、テレビ局が広い観点で、視聴者に誤認や不利益を与えると判断した場合に改訂や差し戻しをされる場合があります。放送したいテレビ局と競合関係にあるメディアに関係が強いCMと判断されるケースも該当する場合があります。

そもそもテレビ放送が政府からの許認可事業であるため、各局は国民・視聴者に正確で役立つ情報を電波で届けることを要請されており、放送基準・法令・自主規制などの枠の中であっても、視聴者の利益を保護するために設けている基準であるといえます。

したがって、広告主は、国民・視聴者にとって不利益を及ぼすCMとなっていないか、改めて確認しましょう。

CM考査で必要な提出書類

必要書類

業態考査では、広告主そのものを確認するため、主に会社に関する各種資料の提出に加え、放送する商品やその取扱説明書および商品の効能などを示す分析資料などが必要です。

表現考査では、実際のCM映像やCMの中で表現している根拠資料などが求められます。CMの原稿などは広告代理店が提出することが多いです。

業態考査の提出書類

主なものは以下の通りです。

会社概要 会社案内やホームページなど、企業の業務内容の全般的なことがわかる資料
履歴事項全部証明書など 発行後2カ月以内のもの(法務省出張所で入手可能。オンライン請求もできる)
会社の連絡先 第三者調査機関からの調査連絡先として、会社担当者の名刺など
商品現品 食品、医薬品、道具など対象となる商品の現品
商品説明書 広告中の商品に関連する取扱説明書やパンフレット
その他 CM表現に関わる根拠資料(調査・分析結果等)、商品の価格表、キャンペーン等の概要書など
関連法令、業界自主規制などで確認が必要となる場合はその確認書類

CM表現考査の提出書類

実際のCMの映像、画像、ナレーションなどです。その中で、商品の優位性などをアピールしていれば、その優位性を示す根拠となる資料についても提出を求められます。

CMの制作を広告代理店に依頼している場合は、広告代理店を通じて提出してくれる場合もあります。主なものは以下の通りです。

CM内容 CM絵コンテや動画素材等。
電子ファイル化されているとなおよい(保存がしやすい)
根拠資料 調査・分析結果、商品価格表他

 

審査に通らない例とは

審査ダメ

日本では放送用の電波は割当制で、テレビ放送局は放送法などを遵守することで、国から電波を割り当てられ、放送許可をもらっています。
したがって、国民・視聴者にとって不利益をもたらす広告主やCM内容は審査に通りません。具体的に見ていきましょう。

業態考査の審査落ち一例

業態考査は、広告主がどのような業種で、どのような商品をどのように販売しているかを確認します。したがって、以下のような例では業態考査をパスできない可能性があります。
 
どのような業種・企業か
・探偵、興信所など個人の情報を侵害する恐れがあるもの
・新興宗教・ギャンブルなど公序良俗に反すると判断されたもの
・その商品を販売するのに必要な許認可や届け出がない企業
・消費者庁にクレーム歴などがあり、改善などの指示を受けた企業
・病院や医師(ただし事実のみを伝えるものは可)
・国内に住所や対応窓口がない、企業実態が疑わしい企業
 
どのような商品・サービスか
・科学的根拠に薄い占い・心霊術などを扱う場合
・事実・根拠が疑わしいなど視聴者にとって不利益であると判断される場合
 
どのような商法(売り方)か
・マルチ商法、催眠商法、キャッチ商法など
・訪問販売
・男女交際のあっせん

表現考査の審査落ち一例

表現考査はCMの内容そのものへの確認になります。放送局によっては、業種別に開示している場合もありますので、広告代理店などに事前に問い合わせたうえで、CM企画を練っていくとよいでしょう。以下に主な業種別の一例を記載します。
 
ゲーム
・あまりにも暴力的、閃光・光の点滅、変化の激しいもの
健康食品・医薬品
・「がんに効く」「病気が治る」など誇大広告の可能性がある場合
金融系
・安易な借り入れを助長するような表現
・貸付条件を明示しない表現
・児童や青少年への配慮し、放送時間を制限
食品
・産地を誤認させるような表現(国内で撮影しているが、実は輸入品だったような場合)
・「おいしい」を必要以上に何度も連呼する表現
 
こういった例は、改稿を求められ、修正した結果、審査を通過する場合もあります。また、各局共通する基準と、局ごとに違う基準もあるので、留意してください。

最終的にテレビ局が決める 

TV局決める

CMの放送基準は日本民間放送連盟の定める放送基準を基本としていますが、最終的には各局が判断しています。これは局ごとに番組編成が異なり、番組ごとにターゲットとなる視聴者層などが違うため、ある局では大丈夫だったとしても、別の局で希望する時間帯での放送は受け入れられないといったことが起こり得ます。テレビ局も各局がそれぞれの基準で経営している以上当然のことと考えられます。

また、その時の社会情勢などによっても、前の日まで放送されていたものが今日は放送されないということもあり得ます(CMの出演者が不祥事を起こすなど)。

テレビ局も株式会社であると同時に一種の「社会の公器」でもあるため、各社なりの判断基準を運用していることを理解しておきましょう。

まとめ

CMをテレビで放送するにはCM考査があります。業態考査では、広告主自身の概要・販売商品・販売方法などを確認します。表現考査では、CMの内容や表現そのものが確認されます。

CM考査は、テレビ局自身が政府から電波放送の許可を得ている以上、国の方針に則り、国民・視聴者を保護する必要性から実施されます。

また、こうした考査基準はその時の社会情勢などにも左右され、最終的にはテレビ局が放送可否の判断をしています。日ごろから考査基準や考査内容の動向をよく観察しましょう。

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