企業が売上や契約数を増やすには、企業や商品の存在を世間に認知してもらわなければなりません。多くの人々に魅力をアピールできる媒体がテレビCMです。
とはいえ、テレビCMもただ流せばいいわけではありません。出稿時のルールを守りつつ、マーケティングの効果を高める意識が必要です。しっかりと戦略を立てられるよう、テレビCMの持つ役割と効果を解説します。
マスマーケティングで活用されるCM(コマーシャル)とは?意味と役割
CM(コマーシャルメッセージ)は、マスマーケティングで活用される手法のひとつです。具体的な意味と役割について説明します。
CMとは番組の途中や前後に放送される広告
CMとは、番組の途中や前後に放送される広告のことです。CMを配信する媒体は大きくラジオとテレビの2つに分けられます。この記事では、テレビCMについて説明します。
テレビCMを流すには、放送枠を購入する必要があります。放送する時間が長くなるほど、予算も高くなるのが一般的です。ラジオ放送と異なり、映像でアプローチできます。この特徴を生かし、旬の芸能人や人気の高い楽曲がテレビCMで積極的に使われています。
テレビCMの役割は「商品の想起」と「購買行動促進」の2つ
テレビCMの役割は「商品の想起」と「購買行動促進」の2つです。それぞれの言葉の意味も踏まえ、具体的な効果について解説します。
商品の想起|商品をなじみのあるものに変える
テレビCMは、商品を想起させる(思い出させる)力があります。その理由は、日々の生活の中で繰り返し放送されるからです。たしかに、好きな芸能人や気になる商品がない限り、テレビCMの内容を注意深く見ない方がいても珍しくないでしょう。
しかし、繰り返し放送することでフレーズやメロディが自然と頭に残りやすくなります。この現象が「単純接触効果」です。テレビCMが何度も放送されると、単純接触効果により自社の商品がなじみのあるものに変わります。
購買行動促進|商品への気持ちを一歩促進させる
テレビCMには、購買行動を促進させる力もあります。全国的にテレビCMが放送されれば、商品やサービスは広く周知されます。ただし、ただ放送されるだけでは、必ずしも購入に結び付くとは限りません。一般的に視聴されるのは番組であり、テレビCMを集中して見ない方も多いからです
しかし人気の高い芸能人やインフルエンサーが出演していれば、興味や関心を抱く人も現れやすくなります。このように視聴者を刺激することで、商品の購入を促進させています。
テレビCMのマーケティング活用メリット
テレビCMを活用すると、マーケティングにおいてさまざまなメリットが得られます。テレビCMならではの強みを理解しましょう。
認知度の向上
テレビCMのメリットは、商品やサービスの認知度の向上につながる点です。インターネットの普及により「テレビ離れ」といわれることもありますが、テレビのニーズは決して衰えていません。総務省が行った調査では、リアルタイムでのテレビ視聴者数の割合は、74%もあると示されています。
参照元:総務省:情報通信白書令和4年版
テレビCMで商品やサービスを宣伝すれば、多くの人々に周知できる可能性があります。企業が掲げるさまざまな目標を達成するには、存在をしっかりと周知しなければなりません。マーケティングの基礎を固めるためにも、テレビCMは欠かせない方法のひとつです。
ブランディング
テレビCMは、ブランディング(企業や商品のイメージづくり)にも良い影響を与えます。制作する際には、企業のイメージに合わせることを意識しなければなりません。美容用品を扱う企業であれば、全体的に清潔感を意識した方が賢明です。
マーケティングで成果を出すには、会社のイメージ向上も欠かせません。特にテレビCMを流すだけで、有名な企業だと認識される可能性もあります。テレビCMを制作する際には、多くの人から視聴されていることを念頭に置きましょう。視聴者の印象に残るものをつくれば、より企業や商品を覚えてもらえます。
売上の向上
テレビCMで認知度アップやブランディングを果たせれば、売上が向上する確率も高まります。全国的に周知することで、より多くの人の購買行動を促進させることができるからです。できる限り効率良く売上を伸ばしたい企業にとって、テレビCMは有効な手段のひとつです。
また、テレビCMはコンセプトを変えずにさまざまな商品を紹介できます。登場人物やイメージを大きく変えず、新商品が出るたびにストーリーを少しだけ改変させる企業もあります。手間を減らしつつ、継続して新商品の売上を伸ばしたい場合もテレビCMがおすすめです。
テレビCMのマーケティング活用デメリット
テレビCMは、必ずしもメリットのみが得られるわけではありません。運用時に考えうるデメリットもともに押さえましょう。
効果測定・費用対効果の正確な数値化がしづらい
テレビCMのデメリットは、効果測定や費用対効果が正確に捉えられないことです。インターネット広告であれば、クリック数が1つの材料となります。一方で、テレビCMの分析で用いられる数値は平均視聴率です。
しかし、番組視聴者の全員がテレビCMを見ているわけではありません。そのため、効果測定で正確なデータを数値化しづらい側面があります。
商材によっては向かない
対象となる商材によっては、テレビCMが向かない場合もあります。具体例としては、ターゲット層が絞られるニッチな商品やサービスが挙げられます。テレビCMは、多くの人に認知されることが目的です。幅広い層に支持される商品やサービスを宣伝した方が効果を発揮します。
ニッチ商品およびサービスは、すでに利用している人と長期的な関係を結ぶことが優先されます。このように、必ずしもテレビCMが売上の向上に繋がるとは限りません。
広告費が他に比べて多くかかる
テレビCMは、他の広告と比べて費用が多くかかります。制作費はどういったCMを作るかで大きく変わり、放送料も局によって異なりますが、テレビCMを放送するには予算を多めに確保しなければなりません。
テレビCMを活用する際には、予算とのバランスを考慮したうえで決定しましょう。加えて、予算以上の利益が得られるよう、入念に戦略を練ることが求められます。
テレビCMがマーケティングにおいて発揮する「3UP効果」とは?
テレビCMがマーケティングで発揮する効果を「3UP効果」と呼びます。それぞれの内容を細かく説明しましょう。
「Scale-Up」=さまざまな人に届ける効果
テレビCMが発揮する効果として「Scale-Up」が挙げられます。こちらは、さまざまな人に商品やサービスの魅力を届ける効果です。テレビCMは、ターゲット層のみに視聴されるわけではありません。あくまで不特定多数の人が見る媒体で放送されます。
多くの人に魅力が伝われば、本来ターゲットではなかった層からも購入のアクションがあるかもしれません。単純に売上数を伸ばすには、テレビCMが効果を発揮しやすい方法です。
「Speed-Up」=いち早く伝える効果
テレビCMには「Speed-Up」の効果もあります。具体的には、商品やサービスの魅力をいち早く伝える効果です。上述したとおり、国民の74%がテレビを視聴しています。全員が同じ番組を見るわけではないものの、テレビCMを流すと幅広い層へ宣伝が可能です。
雑誌やデジタル広告は、内容を確認する人が限られてしまうため、スピードの観点から見るとテレビCMに劣ります。自社の掲げる目標に早く到達したい場合は、テレビCMを優先して選ぶといいでしょう。
「Interest-Up」=興味関心を持たせる効果
テレビCMが持つ3つ目の効果は「Interest-Up」です。多くの人から興味や関心を集めやすい点が強みです。テレビの場合は、電源を点けたままにするだけでもあらゆる情報が得られます。パソコンやスマホにはない特徴のひとつです。
パソコンやスマホから情報を得るには、自ら検索する必要があります。広告も検索結果に基づいて表示されるケースが基本です。そのため、興味や関心を抱く層も狭くなります。テレビCMは、何気なくテレビを点けていた人にも視聴される媒体です。
テレビCMを用いたマーケティング施策の効果を高めるには
テレビCMでマーケティング施策の効果を高めるには、心がけたいポイントがいくつかあります。それぞれの内容を業務に生かしましょう。
テレビCMにおいて守るべきルールを把握する
テレビCMは、出稿する際に数々のルールが存在します。事前にこれらを把握しなければなりません。審査基準をクリアしたテレビCMが出稿を認められます。審査するポイントは大きく分けて2つです。
● 業態考査…企業自体を審査する
● CM考査…テレビCMの内容を審査する
中でも、CM考査の基準は厳しく設定されています。日本民間放送連盟が定めた「放送基準」は、必ず守らなければなりません。
1. 正確で迅速な報道
2. 健全な娯楽
3. 教育・教養の進展
4. 児童および青少年に与える影響
5. 節度をまもり、真実を伝える広告
他にも、制作会社と話し合う中でさまざまなルールが示されるケースもあります。これらを守ることで、テレビCMの出稿がスムーズに進みます。特に公正競争規約の規定には注意が必要です。テレビCMを見た視聴者に信頼されるためにも、ルールは慎重に確認しましょう。
ターゲットを定める
テレビCMでは、ターゲット選定も重要です。テレビで放送するため、幅広い層に商品やサービスの魅力を伝えられます。しかし、ターゲット層が曖昧になると具体的なメッセージを届けられません。「誰に、何を伝えるか」を意識しながらテレビCMの制作を心がけましょう。
例えば、ミニカーのCMを放送するとします。一般的には小さい子どもが欲しがる商品です。そこで、子役が楽しそうに遊んでいる様子を映せば、うらやましく感じて欲しくなる子どもも現れるかもしれません。自社が宣伝したい商品の特性を捉え、ターゲットに届けるよう工夫してください。
ターゲットに合った放送時間帯・曜日を設定する
ターゲットを選定するには、放送時間帯や曜日の設定も重要です。いくら年齢層や性別に合ったテレビCMを制作しても、放送を見てもらわなければ商品の購入に繋がりにくくなります。視聴率のデータを参考にしつつ、いつテレビCMを放送するか決めましょう。
また、年齢層によってテレビを見る時間帯も絞られます。例えば、子ども向けの商品であれば、就寝しているであろう深夜に放送するのはふさわしくありません。子どもの人気が高いアニメを放送している曜日や時間帯に視聴が集中するはずです。このように、日々の生活からもさまざまなヒントが得られます。
テレビCMの種類をうまく使い分ける
テレビCMには、大きく次の2種類に分けられます。
● タイムCM
● スポットCM
マーケティングの効果を高めるには、これらを上手く使い分けることが大切です。タイムCMとスポットCMは、それぞれにメリットとデメリットがあります。商品やサービスによってどの種類の放送が望ましいかも異なるため、双方の特徴をしっかりと捉えましょう。
① タイムCM
タイムCMとは、番組のスポンサーとして放送されるテレビCMのことです。放送時間は30秒と60秒、90秒以上の3パターンがあります。それぞれのパターンで提供表示とアナウンスの内容が異なるのが特徴です。詳しい違いを表で見ていきましょう。
タイムCMのメリットとして、番組の視聴者をターゲットにしやすい点が挙げられます。アニメが放送される時間帯であれば、その作品に合った商品(ゲームや本)を紹介するのも1つの方法です。
② スポットCM
スポットCMは、曜日や時間帯を自由に選べるテレビCMです。タイムCMとは異なり、番組枠を購入するわけではありません。番組に縛られず、多くの視聴者に商品やサービスを宣伝できます。日中と深夜の双方で、テレビCMを放送する選択肢もあります。
スポットCMのメリットは、最短15秒でテレビCMを流せることです。タイムCMは30秒以下で放送できないため、予算も高くなりやすいデメリットを持ちます。この点、スポットCMは費用をある程度抑えられることが強みです。
反対に、放送枠の指定はできず、基本的には不定期で放送されるため、タイムCMと比べて視聴率が安定しない弱点もあります。マーケティングで生かすためには、双方とも活用する取り組みが重要です。
タイムCMとスポットCM|それぞれの適した活用方法
タイムCMとスポットCMは、それぞれに適した活用方法があります。タイムCMは、2クール(6カ月)から出稿できます。長期的に放送するため、企業と商品をしっかりと認知させたい企業におすすめです。
一方で、スポットCMは基本的に1週間から放送期間を決められます。キャンペーンを提供している場合や季節限定の商品を宣伝したいときに有効です。
ターゲットの状況にあった内容にする
マーケティング施策の効果を高めるには、テレビCMの内容をターゲットの状況に合わせる意識も必要です。ターゲットがどの番組を視聴し、どういったニーズがあるかを分析しなければなりません。テレビCMを制作する中で、訴求するポイントを明確にしましょう。
例えば、電化製品を修理する会社がテレビCMを放送したとします。夏や冬は、エアコンが欠かせない家庭もあるはずです。それぞれの季節に壊れたエアコンを直す内容で宣伝すれば、問い合わせや契約の数が増える可能性もあります。この場合は「いつでもどこでもすぐに修理!」と自社ならではの強みをアピールしましょう。
コストパフォーマンスを考慮する
テレビCMの制作では、コストパフォーマンスも考慮したいポイントのひとつです。いくら放送時間を長く確保しても、売上や契約数に結び付かなければコストが無駄になります。できる限り費用を抑えた上で、大きな効果を得られるよう心がけてください。
まずは、制作費や放送料がどの程度かかるかを把握します。上述したとおり、契約する放送時間が長くなるほど、費用も高くなるのが基本です。予算を確保できないうちは、スポットCMを中心に放送することを視野に入れてもいいでしょう。コストパフォーマンスを高めるには、テレビCMを流したあとの影響力を細かく分析しなければなりません。
テレビCMとデジタルマーケティングとの併用も考えよう
テレビCMだけではなく、デジタルマーケティング(デジタル広告)との併用も検討した方が賢明です。併用するメリットや具体例を紹介します。
テレビCMとデジタルマーケティング|併用のメリット
テレビCMとデジタルマーケティングを併用するメリットは、ターゲット層の幅が広がる点です。インターネットの普及により、テレビを見ない人も少なからずいます。デジタルマーケティングと併用しなければ、このような人々に対して宣伝できません。
さらにインターネットは、拡散力に優れた媒体です。YouTubeやSNSで配信した場合、人々の印象に残ればコンテンツをシェアされる可能性もあります。拡散を狙って、世間の流行を取り入れるのも1つの方法です。
デジタルマーケティングは、クリックすると企業のWebサイトにアクセスできます。顧客がアクションを起こしやすいスタイルです。テレビCMで広く周知させつつ、デジタルマーケティングで関係を深めるような戦略も立てられます。
テレビCMとデジタルマーケティング|併用の例
テレビCMとデジタルマーケティングの併用に関する具体例を紹介します。取り上げる内容を自社の業務に生かしてください。
テレビCMをデジタルマーケティングの導入に用いる
まず、テレビCMをデジタルマーケティングの導入に用いる方法があります。主な例が「続きはWebで」と視聴者にインターネット検索を促すフレーズです。テレビCMで商品またはサービスを周知し、Webサイトで購入までの手続きを案内します。
商品を注文してもらうには、さまざまな方法を用意することが得策です。デジタルマーケティングを整えていなかったとしても、電話や書面でやり取りできます。しかし、直接の会話や書類の記入に煩わしさを感じる人もいるかもしれません。Webサイトにアクセスさせれば、契約もスムーズに交わしやすくなります。
このようにテレビCMとデジタルマーケティングを連動させると、取引スタイルの幅が広がります。QRコードを画面に表示させるのも1つの手段です。
テレビCMの素材をデジタルマーケティングにも活用する
テレビCMの素材をデジタルマーケティングに使うケースも存在します。よく見られるのがYouTube広告です。YouTubeの利用者の中にも、テレビCMとほとんど同じ内容の広告を見たことがある方もいるかもしれません。他にも、SNSやTVerの広告にも使われます。
テレビCM用に制作したものを活用すれば、わざわざデジタルマーケティング用につくる必要がありません。コストを削減しつつ、さまざまな媒体で商品やサービスをアピールできます。
ただし、デジタルマーケティングはテレビCMと規格が異なります。再生時間だけではなく、視聴者にスキップされる可能性も考慮しなければなりません。素材をデジタルマーケティングで活用するには、各媒体に合った編集を心がけましょう。
まとめ
テレビCMは、マーケティングにおいてさまざまな効果を発揮します。テレビCMならではの強みを理解し、出稿するタイミングやコストパフォーマンスについて考えなければなりません。制作する際には、ターゲット選定にも注意が必要です。
テレビCMは、大きくタイムCMとスポットCMに分かれます。加えて、デジタルマーケティングとの併用も視野に入れることが重要です。社内で目標を共有しつつ、テレビCM放送後もマーケティングの効果を細かく分析しましょう