SP広告という言葉にどういうイメージをお持ちでしょうか?どんな媒体があるのか、どんな効果があるのかなど、なかなか全体像のつかみにくい代物ですね。
もともとSPは「セールスプロモーション」の略称で販売促進、販促のことですが、SP広告と言う場合、放送など大掛かりなメディアのインフラを介さず、受け手が直接接する広告の総称を指します。別の言い方をすれば、マスメディアやインターネットを使わない広告が全て「SP広告」と言えます。代表的なものは車内や駅での交通広告、デジタルサイネージ・看板・横断幕などの屋外広告、各家庭に届くダイレクトメール・オリコミ・チラシ、さらに売りの現場に設置するPOPも含まれます。
実際、SP広告には何千という媒体種類があり、全ての媒体を把握するのは難しく、なかなかどの媒体がいいか決めきれないことも多々あることでしょう。その場合、媒体の信頼性、広告との接点の見える化、実績が判断基準となります。
また、掲出について明確なルールのない媒体も少なくなく、安全性や遵法性の判断も重要です。その前提をクリアすることで、初めて効果効率、ターゲティング、属性など媒体本来の検証ができるようになるのです。
一方で、誰がその広告に接するのかが明確なメディアが多く、ターゲットを絞り込んだコミュニケーションにはとても有効で、昔も今も広告会社へのお問い合わせが多い媒体です。
あまりにも種類が多くて全てをご紹介しきれないSP広告ですが、ここでは典型的なSP広告の一つである「ルートサンプリング」についてお話しします。
ルートサンプリングとは?
駅前や店頭、店内などで、商品のサンプル(試供品)をもらったことがあると思います。これがサンプリングです。最近のコロナ禍の状況により、人から人に手渡すサンプリングの実施が難しくなりました。それに代わって、教育機関、医療機関、美容室、ゴルフ場、スポーツジム、特定店舗などの施設でサンプリングを行う「ルートサンプリング」の人気が出ています。その施設の利用者のみにサンプリングを行うため、ターゲットを特定しやすく、より効率的に消費者に試供品を渡せるというメリットがあります。
例えば、「ヤングファミリー向け」商品のサンプリングを幼稚園で、という具合です。
Tips ルートサンプリングとは、ターゲットが集まる施設で集中的に行うサンプリング。
どんなルートサンプリングの媒体があるか
教育機関サンプリング
人気のルートサンプリング媒体となっています。サンプリングを希望する広告主の多くが「ファミリー層」へのアプローチを希望しているからです。学校であれば下校の時間、ロングホームルーム、保健指導時、部活動時に『授業の一環』として説明し、配布を行います。プロモーションの内容によって、「教頭・副校長」や「保健体育主任」、「養護教諭」など、窓口となってくれる担当の先生方には企画趣旨からしっかりと説明して、ご賛同いただく必要があります。
医療機関サンプリング
一部の病院では、診察時や会計、母親学級、ベビーマッサージの際に『健康指導の一環』として説明を行い、配布することができます。また、病院によっては病院内で医療従事者からも試供品を直接お渡しできる場合もあり、広告効果がさらに上がります。例えば、健康を意識しているタイミングである人間ドックの時に、受診者に健康関連商品をアプローチすることができます。病院側の審査が厳しいこともありますが、それに通れば逆に信頼性の高い商品として試用してもらえる、ともいえます。
スポーツ施設サンプリング
健康意識・美容意識の高い男女でスポーツジムに通う人は多くいます。残念ながら、コロナ禍でジムへ行くことが少なくなった方もいるかと思いますが、最近ではパーソナルトレーニングのジムも増え、また施設のコロナ対策が進んで、むしろ通いやすい環境になってきました。体にいいサプリメント、スポール飲料、制汗剤など、考え得る訴求商品がいくつもあることから、人気のルートサンプリングの媒体です。スポーツ施設でのタイアップという形を採ればトレーナーやスタッフから商品の訴求が可能なので、病院同様、来店者としてはより安心して受け取ってくれるケースが多いようです。
店舗サンプリング
アパレルショップでのサンプリングも広告主から人気のあるルートです。特定の顧客が期待できることから、属性ターゲットがマッチすれば、最適なセグメンテーションが行えます。アパレルブランドとのタイアップによる認知拡大もそうですが、ブランドイメージを合致させられれば様々な演出も企画できます。新規開発のタイアップエコバッグなどを製作することで、さらにキャンペーンの一体感が生まれ、商品イメージの訴求に繋がります。店舗スタッフから購入時の手渡しサンプリングが行えるので、来店客としては受け取りやすく、安心して試供品を試しやすくなります。
美容室サンプリング
美容関連の中でも特にネイルサロンのルートサンプリングは人気です。可処分所得が高く、美容に興味がある女性のセグメントができ、かなり確実に試供品をお渡しすることができます。さらに店内や店舗とのコラボレーションにより、コラボネイルや店内POP、商品ディスプレイを装飾できるので、様々なツールを作成し、いわゆる「店内ジャック」のような装飾も交渉できます。流行に敏感でお洒落なF1層(女性20~34歳)をターゲットにしたい場合は選択肢の一つとして考えたいルートサンプリング媒体です。
Tips ルートサンプリングでは専門家からリコメンドをもらえることもあり、受け取ってもらえる可能性、試用してもらえる可能性も高い。
ルートサンプリングを検討する際の注意点
ルートサンプリングは、たいへん効果があるサンプリング手法で、実施することで新規のユーザーを獲得するチャンスです。但し、注意が必要な媒体でもあります。
ルートサンプリングを行う施設は、もともと広告媒体として作られているわけではない
あるルートでサンプリングを実施したいとの意向が出た段階で、商品の説明はもちろん、配布方法・時期・配布物・予算等を明確にした上で実施内容を交渉し始めます。交渉を実施した後でないと、具体的な実施可否、配布可能店舗数、配布開始時期等の詳細がなかなか明確になりません。
他の施設をお借りして行うため、配布オペレーションが難しい場合がある
例えば、ある店舗で配布を実施する場合、本部で承認をもらった内容に現場の店長が合意していただけないこともあったり、指示が店員等に行き渡っておらず、配布が実施されなかったり、繁忙時間帯等に配布されていない場合などがあります。
Tips 広告メディアが目的の施設ではないため、予定通りのオペレーションが難しいことも。
まとめ
ルートサンプリングはターゲットを絞り込んだ広告としてはとても有効で高効率といえますが、半面、ルートサンプリングを通常のトラディショナルメディアと考えて出稿すると大きな落とし穴があります。少しでも安心して実施したい場合はルートサンプリングを扱っている専門の部署、ノウハウを集約している広告会社に依頼することをおすすめします。
ともあれ、効果的な手法であることは間違いありません。ターゲット、エリアリーチ、オケージョンのセグメント要素を組み合わせた強力なターゲットプロモーションですので、特長をしっかり把握して実施をご検討下さい。