市場のボーダーレス化が進み、グローバル市場でのマーケティング・コミュニケーションはますます重要性を増しています。直近ではコロナ禍により、国を跨いだ移動は難しくなっていましたが、それにも関わらず、グローバル市場での取引を継続している企業は多く存在しています。また、コロナ禍が収束すれば、その反動もあり、さらに企業のグローバル化が加速したり、訪日インバウンドが再興したりすることが予想されます。このような状況において、海外進出にあたり、広告コミュニケーションを行うにはどうすればよいか、また訪日インバウンド市場をターゲットにした広告はどう行うのがよいか、などについて紹介します。
1.日本企業の海外進出
日本企業が海外に進出して現地で広告活動を行う際に、現地のエージェンシーに広告制作や実施を依頼することになります。その際に、日本国内でのエージェンシーとの取引とは異なる部分が多々あります。どうしてそのような違いが生まれるのか、そのような違いがあるときに、どのようにエージェンシーと付き合ったらよいか、等について紹介します。
1-1.メガエージェンシー
グローバル市場には。「メガエージェンシー」とよばれるエージェンシーのグループが存在します。規模の大きいところでは、WPP、Publicis、Omnicomなどの欧米のメガエージェンシーがその代表的なものです。これらのエージェンシーは、広告の主な機能であるクリエイティブやメディア、またPRやプロモーション、さらにはデータ分析やマーケティング・リサーチなど、日本の多くのエージェンシーが提供している業務と同様のサービスを提供していますが、日本のエージェンシーと異なる大きなポイントの一つとして、メガエージェンシーは単体のエージェンシーの複合体であるという点があります。多くは独自の特質を持ったエージェンシーで得意分野も違います。日本のエージェンシーが一つの企業の中に複数の部署を持ち、それらの部署が個別に業務を行うけれども、基本的には一つの企業であるのに対して、メガエージェンシーは、異なる複数の企業から構成されており、それらは基本的に別会社です。その場合日本のエージェンシーのように、営業担当者を窓口として仕事をしていれば、総合的にプロデュースしてくれるということはあまり期待できず、クリエイティブ戦略とメディア戦略の方向性が異なってしまう、ということも起こり得ます。
この点を念頭において、メガエージェンシーとの取引を行う必要があります。
1-2.意思決定の仕組み
多くのグローバル企業が本社(HQ)によるマネジメントだけでは現地でのきめ細かい業務対応ができないと判断し、いくつかの地域(リージョン)ごとにマネジメント機能を持たせています。例えば、東南アジア全体のマネジメントをシンガポールのオフィスで行う、といった形です。エージェンシーもこの体制に合わせて、リージョンごとにチームを作っている場合が多くなっています。その際に、各リージョンのエージェンシーによって作られた広告メッセージや、ブランドの管理体制などが、そのリージョン全体で統一されます。多くのグローバル企業が上意下達の意思決定方法を採用していますが、その場合、個々の国の事情はさておき、リージョンのトップで決められた広告メッセージやブランドマネジメントの手法をそれらの国で採用する必要がある場合があります。個々の国のローカルエージェンシーからすると、現地の事情を深く考慮せずに指示をされているように感じる場合もあり、そこに摩擦が生まれることがあります。
日本国内のみで広告活動を行っている場合はこのような点で現場とマネジメントの間に大きな乖離が生じることは少なく、この点に戸惑いを感じる日本企業の担当者が多いと思われます。
◎欧米グローバル企業に対応した広告会社は、組織と指揮系統が日本と違う
1-3.日本の本社からのマネジメント
日本企業の中にもリージョンごとのマネジメントを実施している例もありますが、多くは日本国内に本社機能があり、生産や財務管理などのマネジメントは日本からもコントロールされていることが多いようです。ただ広告コミュニケーションの領域では、必ずしも日本の本社でのマネジメントが徹底されていないケースが多く見られます。これは日本語がグローバル言語ではないことにも起因すると思われますが、日本企業が現地のエージェンシーに任せきりになっているケースも多く、グローバルでのブランドマネジメントを困難にしていることがあります。一方で「現地主義」を唱えて成功している会社もあり、統一したブランドポリシーと現地特有のインサイトをマッチングさせながら、いかにしてグローバルでブランドを管理していくかという点は、多くの日本企業が課題としていると思われます。現地をよく知るエージェンシーは貴重なパートナーですが、一方で日本本社とも対応できる連携力もないがしろにはできません。
◎課題は「日本」と「現地」のリンケージ
2.訪日インバウンド
訪日インバウンド市場においては、ターゲットとなるオーディエンスは日本国外に居住しています。そのようなターゲット層に対して広告する際には、以前は海外のエージェンシーに依頼するしかありませんでしたが、いまではオンライン広告が発達したこともあり、日本からも海外の消費者に対して広告を行うことが比較的簡単にできるようになってきました。
ここでは、そのいくつかの手法を紹介します。
2-1.SNS広告
FacebookやInstagramなどはグローバルなメディアであり、これらのプラットフォームを活用した広告は海外の消費者にも届けることができます。また、GDN等のアドネットワークも日本からコントロールすることが可能です。
また、中国のような巨大市場では、中国国内で発展したWeChatやWeiboといった独自のSNSがあります。
さらに、YouTubeもGDN同様に日本国外に居住する消費者に対して広告をすることが可能なメディアです。
2-2.海外向けYouTuber
日本が好きな外国人フォロワー数が多かったり、英語圏向けのフォロワーが多かったりするYouTuberも増えてきています。これらのYouTuberをインフルエンサーとして起用することで、海外の消費者にアピールすることができます。
日本に興味を持っている海外在住の消費者に対して、日本への憧れをより強化するための手法として有効だと考えられます。
2-3.越境EC
いまや国を超えてオンラインで商品を売買することは一般的になりました。どこの国に住んでいても、気軽に海外からの商品を購入することができるようになりました。
一方で、現地の消費者に対してどのように広告をするのがよいか分からない日本企業も多いと思われます。
電通グループ内のエージェンシーでは、電通テックが越境ECサイトの構築からライブコマースまで、この領域のサポートを行っています。
◎インバウンド顧客を狙う広告は日本からでも海外に発信・申込可能!
3.まとめ
日本国内では既に成長があまり見込めない市場が増えており、多くの日本企業にとって、グローバル市場への進出や、訪日インバウンド市場でのマーケティング活動は今後さらに重要になっていくと思われます。
一方で、高い技術力や商品開発力を持ちながらも、海外でのマーケティングのノウハウがないために苦戦している日本企業も多いと思われます。
今では、日本のエージェンシーもグローバル市場への対応力をかなり強化していますので、まずは日系のエージェンシーに相談をしてみるのがよいかもしれません。