野球独立リーグ・地域密着型の経営と広告価値

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野球独立リーグ・地域密着型の経営と広告価値

プロ野球と言われると私たちは日本プロ野球機構(NPB)に所属するセ・パ両リーグ12球団を思い浮かべますが、日本にはもう一つ「独立リーグ」というプロ野球組織が存在しています。発足当初はアマチュアの扱いでしたが2009年より、参加しているメンバーはれっきとしたプロ野球選手として扱われるようになりました。とはいえその規模については集客、収益においてもNPBの約100分の1と言われています。またその収入源のほとんどは主にスポンサー企業に依存しているのが現状です。独立リーグのチームは日々どのような活動をして経営を持続させているのでしょう。そして協賛企業はどのようなメリットをそこに得られるのでしょう。


独立リーグとは

理念

独立リーグの存在の意義は一般社団法人 日本独立リーグ野球機構(IPBL)のホームページに記載されている以下の文で、すべてを言い表しているでしょう。

「当機構は、わが国における野球水準を高めるべく、野球選手を育成する会員(独立リーグ)が協力し合い、野球が地域社会の文化的公共財であることを認識し、これを普及して地域社会の市民生活の向上をはかるとともに、野球事業の推進を通してスポーツの発展に寄与し、日本の地域社会の繁栄と国際親善に貢献することを理念とする」

野球選手の育成と「地域の繁栄」を目指すことを強調しているのが大きな特徴です。

歴史

とはいえその歩んできた道は苦闘であり、紆余曲折の連続でした。スポンサーが集まらない、予想以上に経費がかかる、選手、審判そのものが確保できないなど…。2005年に初めて四国リーグが発足して以来全国各地で様々な構想や話し合いがもたれましたが、チームやリーグの結成・脱退、再編などを幾度となく繰り返してきました。2024年3月の現在では5つのリーグが加盟している状況です。

構成

以下に現状のリーグおよび加盟球団名を整理します。

〇四国アイランドリーグplus
愛媛マンダリンパイレーツ
香川オリーブガイナーズ
高知ファイティングドッグス
徳島インディゴソックス

〇ルートインBCリーグ(ベースボールチャレンジリーグ)
福島レッドホープス
群馬ダイヤモンドペガサス
信濃グランセローズ
茨城アストロプラネッツ
栃木ゴールデンブレーブス
埼玉武蔵ヒートベアーズ
神奈川フューチャードリームス

〇ヤマエグループ九州アジアリーグ
宮崎サンシャインズ
火の国サラマンダーズ
大分B-リングス
北九州下関フェニックス

〇北海道フロンティアリーグ
石狩レッドフェニックス
美唄ブラックダイヤモンズ
KAMIKAWA・士別サムライブレイズ

〇日本海リーグ
富山GRNサンダーバーズ
石川ミリオンスターズ


[Tips]
独立リーグは2024年3月現在全5リーグ。合従連衡を繰り返す。その収益の多くは企業からの協賛金で賄っている。


活動・経営

協賛企業

独立リーグのスポンサーの中で最も大口なのはBCリーグの冠となっているルートイングループですが、各リーグの球団はいくつかの企業によって小口に協賛されることが多いようです。これは独立リーグの球場集客がおよそ1試合平均400名ほどと言われている中(球団によっても開きがある)、各企業が大口協賛することに慎重になっている面があること、そして球団自体も1企業に依存して急にバックアップを打ち切られたりすることへのリスクヘッジ、この両面があると考えられます。が、各企業ともリーグが掲げる理念に共鳴し、チームの地元への親和性を考慮しての戦略的協賛であることには違いありません。

社員として球団が求める人材

各球団とも非常に経営にシビアにならざるを得ない状況の中、選手以外にチームが採用をめざす人材も新しいサービスの企画開発や、経営経験者、人的パイプを持つ人など、即戦力が求められています。いかに新しいマネタイズ手法を開拓できるかが、各球団の喫緊の課題です。また実際の作業になると地域の行政との連携も非常に重要な仕事になってきます。協賛企業だけでなく行政のバックアップも独立リーグの生命線とも言えるからです。

選手たちの活動

独立リーグに所属する選手たちはとにかく野球が好きで、いつかNPBで活躍することを夢見つつ収入は度外視してもこの世界に身を置く人々です。元NPBの有名選手も所属したりすることもありますが、そういった背景のないプレイヤーは球団からの給与だけでは賄えずアルバイトなどをしていることも多いようです。球団の本拠地に居を構えつつ、野球教室を開いたり、地元のイベントに参加したり、地域貢献活動にも積極的に参加しています。

ある球団の場合

原則選手たちの給与は4月~9月のシーズン中以外には支払われないため、オフシーズンには協賛企業が自社のアルバイトをあっせんすることもあるそうです。遠征試合は原則日帰りが前提ですが、協賛企業が移動のためのバスを提供したり、宿泊が必要な時は企業のチェーンのホテルで部屋を提供したりするそうです。このようにチームと協賛企業は様々な形で有形無形の協力関係を持ち、その距離は大変近いものです。
同様に球場では選手がその場で観客にサインをくれたり、試合後に総出で見送ってくれたり、観客からすれば選手との距離が近く、NPBの試合とは違った楽しみ方ができるようになっています。


[Tips]
独立リーグは協賛企業、選手、観客の距離が非常に近い。地域の貢献活動に積極的に参加。

協賛メリットを考える

柔軟な協力体制

実際各企業がどのような協賛メリットを得ているか、見てみましょう。
ユニフォームや野球場への企業・ブランド名掲出、冠試合開催、名刺への球団ロゴ掲出、顧客の球場でのイベントや始球式参加、選手との交流、球団ホームページでの企業紹介など。これらはほんの一例ですが、協賛企業の要望に沿ってより柔軟に協力体制を取ってもらえるのが独立リーグの特色でもあります。

CSR、三方良しの視点から

冒頭にも述べましたが、独立リーグ所属球団の広告媒体としての影響力は決して大きいものではありません。ただ各協賛企業は地域との関係性を非常に重視して日々の活動をしているので、地元密着を価値の根幹とする球団は様々な視点で親和性の高いものになります。単純に協賛メリットを考えるというより、地域社会への貢献、若者や野球そのものの育成を通して「売り手」と「買い手」だけでなく、「世間」の三方を満足させ、地元における企業の信頼と発展を得ることが可能になります。


[Tips]
企業との柔軟な協力体制構築が可能。CSR的視点で社の発展に生かすことができる。


まとめ

これからの企業は売上を拡大させるだけでなく、社会からどのように必要とされているかが問われる時代。地域貢献と若者の育成をその設立理念として掲げる独立リーグの各球団は、まだメディアとしての価値は発展途上です。が、企業といわば「夢を共有するパートナー」になりえます。おらが町の球団から、もしNPBの選手が生まれたらチームの媒体価値も大きく上がるでしょう。協賛も予算的に非常にリーズナブルに始められるのもまた魅力。一度検討をしてみてはいかがでしょうか。

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