テレビCMでよく聴き覚えのある音楽が背景に流れているとつい映像に見入ってしまうことがありますよね。既存の名の知れた楽曲がそのまま流れる場合もありますし、演奏がアレンジされていたり、替え歌になっていたりするものもあります。またこれまで聴いたことはないけれど妙に耳に残るオリジナルのテレビCMソングもよくあります。こういった音楽はいったいどのように選曲されテレビCMに使用されることになるのでしょうか。実際さまざまなケースがあるので、いくつか見ていきましょう。
音楽の広告使用の流れ
CMプランナーからの提案
わかりやすくするためにまず既存楽曲をそのまま使う場合のおおよその流れを説明します。あるキャンペーンのテレビCMにこんな音楽を使いたいという提案は、CMプランナーなど広告関連会社のクリエーティブ担当者からなされることが多いでしょう。数多ある音楽からなぜこの曲を使うのか。提案の中では、おそらく商品のターゲットに認知度が高かったり、商品イメージをそのまま言いあてていたり、あるいはその楽曲やアーティストを起用することによって副次的なプロモーションが可能になるなどさまざまなメリットを理由としてあげられるはずです。制作期間の状況にもよりますが、いくつかの候補、可能性を残しつつじっくり決めていくことをお勧めします。
著作権者との交渉
既存楽曲を使用するにはまず作曲者・作詞者などの著作権者及び著作隣接権者(後述)に許諾を取らなければなりません。広告関連会社の担当者は提案の段階である程度の事前交渉はしていることが多いですが、許諾が取れるのか使用料がいくらになるのか、それは曲によって千差万別。およそですが有名曲であればあるほどその許諾には多くの予算がかかると考えてよいでしょう。中には権利者が多数存在する場合や、作者がすでに亡くなってその親族が権利者になっていたり、交渉したもののどうしても使用許可を出してもらえないような楽曲もあったりします。いずれにしてもこの交渉を抜きにしては作業を進めることができません。当初の目論見が大きく外れてしまうこともありますので、どの曲を使うのか、どう使うかについてある程度フレキシブルに、段階を踏んで検討・交渉を進めることが肝要です。
JASRACへの使用報告
ご存じの方が多いと思いますが音楽の商用利用については、JASRAC(音楽著作権協会)が管理しており、上述した原曲の使用料のほかに広告への使用回数によって放送(広告展開)使用料を納めなくてはなりません。テレビCMをどの局に何回放映するか、テレビだけでなく屋外広告や、店頭ビデオなども全国において何回流れるかをフォーマットにまとめ事前に提出します。条件によって一回単価がそれぞれ決まっていて、最終的にその合算が請求されることとなります。
Tips まずなぜその曲を使うのかを吟味。著作権者との交渉、JASRACへの申請がマスト
著作権について簡単に
著作権と著作隣接権
広告に音楽を使用するにあたって少しだけ著作権周りの話をしておきましょう。作詞者や作曲者が「著作権」を保有しているのに対し、そのCDを制作したレコード会社や演奏したミュージシャン、歌手は「著作隣接権」というものを保有しています。既存の音源をそのまま広告使用する場合は、この2つの権利に対して確認、許諾を得、使用料を支払わなければなりません。ちなみにそれぞれは実際には細かい権利の集合体のようなもので、著作権と著作隣接権という名称はそれらを総合した呼称だとご理解いただければと思います。
権利の管理団体
著作権については先ほど触れたJASRACが大多数の権利者から委託を受けて管理していますが、著作隣接権については管轄外です。演奏者についての著作隣接権は所属プロダクションが直接管理しているケースが多いですが「日本芸能実演家団体(芸団協)」及び「実演家著作隣接権センター(CPRA)」が団体として管轄しています。またレコードについても直接レコード会社や音楽出版社に話を入れる場合が多いですが、団体としては「一般社団法人日本レコード協会」が対応しています。
使用料
上記に見てきたように、音楽を広告に使用するには、まず著作権者、及び著作利用権者の許諾を取り、交渉を経てしかるべき原曲使用料を払います。またその契約が済み、いよいよ広告展開するときにはさらにJASRACに使用申込を行い、テレビ、インターネット、劇場、店頭など、どの媒体に何回放送するのかの詳細な報告書を提出することになります。それによって放送(広告展開)使用料を支払うのです。最終的にはこれらの金額は権利者に還元されることになります。
Tips 音楽の広告使用には著作者、著作隣接権者との契約、放送(広告展開)使用料の支払いが発生する
CM音楽完成のいくつかのパターンと、予算
原曲をそのまま使う以外にも
以上までは市販されている既存の楽曲をそのまま使用するケースを説明してきましたが、著作権、著作隣接権を各方面でクリアした上、放送使用料も払わなくてはならず、場合によっては莫大な費用が掛かることになります。広告音楽を扱うにあたってはこれ以外にも方法があるのでいくつかご紹介します。
既存楽曲をアレンジして使う
既存の楽曲をそのまま使うのではなく、新しく○○風にアレンジして再録するというやり方もあります。もちろん著作権については許諾が必要ですが、新しく演奏するのでこれについては原則、著作隣接権はクリアせずとも作業を進行することができます(権利がアーティスト内で複雑に交錯している場合があるので注意は必要)。替え歌などもこのパターンに属すると思いますが、著作権者はそういったアレンジについて許諾しない場合もありますのでしっかりとしたやり取りは必要です。
アーティストに新しく作ってもらう
アーティストが商品のために作曲してくれるのか、と思うかもしれませんが、実はテレビCMでの楽曲放送は曲の制作者サイドにとっても大きなメリットになるのです。新曲を発表する場合、レコード会社だけの宣伝でなかなか届かない消費者にテレビCMキャンペーンは強力な発信媒体になり得ます。もしある程度のオンエアが見込まれるキャンペーンで、話題性のある音楽を使用したいと思うなら、思い切ってこれぞと思うアーティストのプロダクションに相談してみてはいかがでしょう。レコード会社からこれから売り出したいミュージシャンのプロモートがある場合もあります。新曲をリリースしたいタイミングに合わせられれば、両者ウィンウィンのキャンペーンが構築できるかもしれません。商品特性など、曲中にアピールしてほしいポイントがあればしっかり伝えることも大切です。さすが!と思うような形で楽曲として昇華させてくれることも多々あります。そしてさらに原曲使用料やJASRAC放送使用料をキャンペーン中は免除という特典も事前の交渉次第です。
テレビCM制作スタッフでオリジナルを作る
特に有名なアーティストを使わずとも、広告関連会社の制作スタッフが全く新規のCMソングを提案し、そのキャンペーンが大成功することもあります。「CMソング」と聞いて思い浮かべる音楽については結構多くこのパターンがあります。商品の伝えるべき要素を十数秒、数十秒の中に過不足なく伝えるにはやはりその分野で活躍した知見が有効となります。CMプランナーの中にも特にCMソング制作を得意とする人もいるので、キャンペーンで訴求したいポイントなどを、オリエンテーション等でぶつけてみるとよいでしょう。商品のオリジナルソングなので、この場合もキャンペーン中は楽曲使用料、放送使用料などかからないはずです。
Tips 楽曲の広告使用についてはさまざまなパターンがある。やり方によって大きなコストカットも可能。
まとめ
言わずもがなですが音楽の広告使用は目的ではなく手段です。まずは商品の課題に対しその楽曲を使用する必然性が感じられるかどうか。そこがクリアされればキャンペーンの大きな力になることも多いはずです。実際制作の現場では上記のようなさまざまなケースで作業が行われていますが多方面への交渉や煩雑な手続きが必要になってくることも多いので、経験値の高い広告会社とじっくり相談しつつベストな選択をしていきましょう。
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