「パーパス経営」や「パーパス・ブランディング」など、企業経営戦略やブランディングのキーワードとして「パーパス」という言葉をよく耳にするようになりました。
どういう意味で、なぜそれが注目されるのか。ここでは「パーパス」とそれにまつわるキーワードにフォーカスしながら、昨今のブランディング事情を垣間見てみましょう。
パーパスとは
「社会に対して、ポジティブな変化をもたらす」ことが自社にとってのパーパスである、と考える企業経営者が増えています。
「パーパス(purpose)」を辞書で調べると、「目的・意図」と訳されます。また、「目指す・決意する」という動詞の意味もあります。企業経営やブランディングの文脈では、企業や組織が何のために存在するのか、そのビジネスが存在する本質的な意義といった意味で使われ、「存在意義」と訳されることが多いですが、「志」「大義」といったほうがしっくりくる、という声もあります。カタカナでそのまま「パーパス」と表記するケースも多く目にします。
気候変動やコロナ禍など、世界に共通する社会課題がクローズアップされる中で、企業の存在意義を社会課題解決に置き、社会にポジティブな変化をもたらすことを企業経営の根幹に据えることが多くなっています。
Simon Sinekのゴールデンサークル
サイモン・シネック(Simon Sinek)は、TEDスピーチで「優れたリーダーがどのように行動を促すか」といったリーダーシップ論としてゴールデンサークル理論を提唱しました。3つの円からなる単純なゴールデンサークルですが、一番内側の「WHY?」(なぜ)からスタートし、次に真ん中の「HOW?」(どのように)、最後に一番外側の「WHAT?」(何を)に到達する、という順番です。人を動かすのは、何を(what)ではなく、なぜ(why)であり、優れたリーターは共感を呼ぶ「WHY?」の力で、人を動かすことができるという骨子です。
ゴールデンサークル理論は、その後、企業経営やブランディング、はたまたプレゼンテーションのテクニックにまで応用・援用されていますが、この「WHY?」(なぜ)からスタートするという点はパーパス経営と相通じる考え方です。
パーパス経営では、企業や組織にとっての「WHY」だけでなく、そこに所属し、働く従業員・社員一人ひとりの「WHY」を突き詰め、組織の「WHY」に従業員・社員が強く共感できるか、反対側から見れば、従業員・社員の「WHY」を応援し、積極的に支援できる企業・組織かどうか、双方向の共感が重視されます。
Tips 「WHY」からスタートする
なぜパーパスが注目されるのか
今、多くの企業がパーパスに注目し、パーパス・ブランディングに取り組んでいる理由は何でしょうか。2つの側面から考えてみます。
【理由1】市場の成熟と顧客の変化
最近では、多くの企業が「選ばれ続ける理由」探しに苦心しています。成熟した市場においては商品・サービスの機能や品質面での差別化は容易ではなく、消費者の目からは、「だいたいどれでも同じくらい」と見られてしまうことも多くあります。モノとしてではなく、商品・サービスを購入した結果として得られる「体験・コト」に消費の中心が移っています。消費者から「他と違う価値がある」として選び続けてもらえるよう、「何のために、どうして」それを選ぶのか腹落ちしてもらえるよう、「WHY」、志や大義を明確にしよう、というのがパーパスのひとつの役割です。
【理由2】人材の変化
パーパス経営では、株主や顧客だけでなく、すべてのステークホルダーを同じように重要な存在ととらえます。つまり、社員・従業員のモチベーションやロイヤルティなども経営者にとって重視すべき指標となります。
「ミレニアル世代」(およそ1980~2000年頃に生まれた世代・諸説あり)に代表される若年層は、仕事を選んだり、就職先を決めたりする際にも「社会的な意義」を重視する傾向が強くなっています。この世代には「社会起業家」と呼ばれる社会課題の解決を目指して自ら起業する人や、NPO法人などを立ち上げ問題解決に挑戦する人も多くみられます。待遇の良い大企業への就職より、社会にポジティブな変化をもたらす手ごたえを感じられる仕事を選びたいといった価値観への変化です。
労働力不足の一方で、こうした価値観を持つ人々が増加しているという背景を受けて、採用を担当する人事部門はもちろんのこと、日常業務での組織マネジメントにおいても、強い共感を呼ぶパーパスの必要性が高まっているのです。自社のパーパスに共感してくれる人材を採用し、一人ひとりのパーパスを大事にした組織経営を実行することで従業員・社員のモチベーションを高め、ロイヤルティやエンゲージメントを向上させる効果を期待してパーパスを導入するのです。
Tips 背景に「モノ」から「コト」へ、「待遇」より「手ごたえ」への意識の変化
パーパスとミッション・ビジョン・バリュー(MVV)って違うの?
企業理念として、ミッション・ビジョン・バリュー(MVV)を掲げている企業は多くあります。ミッション=「使命」、ビジョン=「ミッションの遂行によって実現したい未来像」、バリュー=「ミッション・ビジョンを成し遂げるために必要な価値観や行動指針」という構造で、企業理念を設定する手法です。
ミッションとパーパスは重複している部分もあり、すでに制定しているミッションの中にパーパスが含まれている、という会社も珍しくありません。
ミッション・ビジョン・バリューがうまく機能している企業がある一方で、ミッション・ビジョン・バリューを制定したものの、社員になかなか浸透しない、具体的な事業・ビジネス上の行動と結びつかない、といったお悩みを聞くこともよくあります。
強烈なパーソナル・ストーリーと結びつく「パーパス」
反対に、先ほどお話したような若手の社会起業家のお話を聞くと、その人個人にとっての強烈な体験に基づいた「WHY」を持っていて、感銘を受けます。このように「WHY」をパーソナルなストーリーとして語ることができる点がパーパスの強みなのではないかと考えられます。その個人的な「WHY」への共感が、事業をドライブし、人や資金を集める原動力になるのです。
ただ、これから作る小さな会社であれば良いが、歴史ある大きな企業では、経営者の個人的な「why」など見つからないと思われるかもしれません。そうした場合、創業者のエピソードなどを掘り起こしてみると、会社がスタートしたとき、その後の困難な状況を打開したとき、そこにどんな物語があったのか、発見できるケースも多くあります。
WHYの背景となるパーソナル・ストーリーへの共感が強いパーパスづくりの秘訣のひとつです。
Tips パーパスはより人格的、だから共感を呼ぶ
まとめ
サステナビリティ、SDG‘sなど社会全体が抱える課題に対して、企業はどう貢献できるのか。社会的な存在意義のある企業・組織とはどういうものか。自社は、社会に対してどんなポジティブな変化をもたらすことができるのか。こうしたことを経営の根幹にすえるパーパス経営に、ぜひあなたの会社でもチャレンジしてみませんか。
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