広告クリエイティブにかかる費用、特にTV-CMの制作費に「高い!」と感じるクライアントは多くいらっしゃいます。その一方で、制作会社(プロダクション)からは「コストがかかる案でも予算が厳しい」といった苦しさや、広告会社のクリエイティブ・チームからは「チェックや変更の費用が予想以上で…」といった悩みが聞かれます。CM制作が高くなる理由を知り、費用を抑える方法はないのか、考えてみます。
広告クリエイティブは、常に“オーダーメイド”
広告クリエイティブは、常にオリジナルかつ新しいアイデアが求められます。「どこかで見たような広告」であっては、その役割である“注目”や“興味”を得ることはできません。広告主にとっても、ビジネスの成否に大きく影響し、ブランドをつくる手段でもあるため、“オーダーメイド”で仕立てる自分だけの1着のようなものです。そのため、カスタム生産のような省力化によるコストダウンが難しいのです。CM制作費が高くなるコストの内容を“見えないコスト”と“見えるコスト”にブレイクダウンし、どうすれば費用の効率化が図れるのかを考えましょう。
CM制作の見えないコスト
広告クリエイティブの中でも、TV-CMの制作には直接アウトプットには表れない作業がいくつもあります。CM制作費をアップさせている“見えないコスト”の中身を見ていきましょう。
プレゼン作業
企画アイデアやCMの内容を広告主に説明して承諾してもらうためには、企画書の他に、コンテ(ストーリーボード)や映像資料、音楽サンプル、タレント資料などを用意してプレゼンテーションを行います。作業人件費はもちろんですが、コンテ作成代などの実費もかかります。「コンテ(静止画)では、社長がイメージできないから」といった理由で、ビデオコンテが必要になることも。プレゼンが大掛かりになればなるほど、結果的にCM制作にまつわる費用が高くなってしまいます。
手直し、代案、再プレゼン
広告クリエイティブのプランが、1回のプレゼンテーションで決まらないこともしばしばあります。プラン自体が不十分なことももちろんありますが、広告主の煩雑な決済システムや関係者の意見の不一致といった社内事情で、プランの“代案”が求められるケースも珍しくありません。オリエンの不備によって“再プレゼン”が必要になることも。クリエイティブ・チームとクライアントとのリレーションや広告の決済プロセスが不備だと、見えないコストが積み重なっていきます。
Tips 実費として表面に出にくい「再提案」「度重なる変更」が「見えないコスト」に
CM制作の見えるコスト
CM制作費の中には、直接アウトプットのクオリティに関わる様々な費用があります。これらは、費用をかけるとリッチな雰囲気のアウトプットに、費用を抑えすぎるとチープなアウトプットになるといった“見えるコスト”と言えます。その具体的な中身と注意点を見ていきましょう。
スタッフの力量
CM制作の人件費、中でもディレクター(演出家)とカメラマン(撮影家)は、誰に依頼・起用するかによって大きく変わってきます。 “巨匠”とよばれる高額なフィーのディレクターもいて、経験と実績によって高いスキルに裏付けられています。注意しなければいけないのは、一流の人ほど得意なカテゴリー(業種)や企画・設定・ストーリーへの適性があること。著名だというだけで起用すると、力量が活かせずに、コストだけが上がることになりかねません。
CG(コンピュータ・グラフィックス)
CGの技術は今や「万能」と言ってもいいほどですが、モデリングの複雑さ、レゾリューション(画質密度)、秒数などによって、費用は大きく異なります。例えば実写の再現。現在の技術では、ほぼ本物と見間違うレベルまで可能ですが、高いクオリティを求めるとコストもうなぎ登りに高くなります。注意すべきなのは、CGの役割が、安価な“分かりやすい図解”なのか、高額な“繊細な美しさ“、もしくは超高額な”エンタテーメント“なのか。役割を考えてオーバークオリティにならないよう注意しましょう。なんでもできるからといってやみくもにCGに頼れば、それだけ費用も時間も膨らむことになります。
スタジオ費/ロケーション費
スタジオ費は、場所的な便利さ、設備や機材の充実度、セットの組める空間の大きさによって変わってきます。余裕をもったスケジュールで制作作業を進めないと、「高いスタジオしか空いてない」ということになってしまいます。
ロケーション費は、CMの演出プランに適切でかつ撮影使用が可能な場所を探すロケハン費、使用料、そのほか撮影許可申請、警備員の手配、機材車やロケバスなど様々なコストがかかります。特に、天候と太陽の光まわりによって、撮影日程が延長するコストを想定する必要があります。できるだけ演出プランからムダなシーンを削り、ロケーション場所を絞った撮影プランにすることがコストダウンに有効です。
美術費(セット、大道具、小道具、衣装など)
美術は、CMのクオリティとコストに最も直結する要素のひとつです。中でもセット費は、撮影の度に設計し、撮影が終わると撤去することが基本なため、使いまわしが利きにくく、高くなりがちです。大道具、小道具、衣装は保管できますが、保管費が必要です。
予め期間をおいて複数のCMをオンエアすることが予定されている場合は、まとめて一度に制作/撮影することが、コストダウンのために有効な手立てです。
編集費/合成作業
編集は、撮影した素材やCGをつなぎ合わせて、ビジュアルを15秒や30秒など規定の秒数に仕上げる作業です。編集スタジオと技術オペレーターは、時間制でコストがかかるのが基本です。素材のクリーンアップ、合成作業、CGの組み込み、色味の調整、テロップの挿入などの作業があります。特に複雑な合成作業は工数がかかるため、「高い」と映りがちです。
音楽費
音楽は、視聴者を振り向かせたり、CMの雰囲気を決定づけたりするクリエイティブの重要な要素です。作曲・演奏・収録などの音楽制作費が必要です。また、有名な音楽を使う場合は効果が大きい反面、著作権にまつわる楽曲使用料が契約時とオンエア量に比例してかかることに注意しましょう。パブリック・ドメイン(著作権切れ)の曲を使う場合は、楽曲使用料は必要ありませんが、音楽制作費または既成のレコードを使う原版使用料が必要です。
音楽の費用を抑える方法に、有名アーチストの楽曲リリースとのタイアップがあります。しかしながら、CMの狙いやイメージにピッタリの楽曲とは限らない上に、アーチスト側からも、著名な人ほどその企業のブランド・イメージ、CMの内容、オンエアのタイミング&量などの情報をもとに自分たちの音楽とのマッチングを検討することもあり、タイアップ成立に至らないケースも少なからずあるのが実情です。
Tips 「有名度」「新技術」「クオリティ」は、「目に見えるコスト」に直結!
費用対効果で考えよう。
マス広告の強みは、企業/商品/サービスの「Attention:認知を高めること」と「Interest:興味を喚起すること」。そしてマス広告を続けることで、強いブランドを醸成できることです。CMは、そのための手段に過ぎません。しかしながら、CMの制作に関わる人たちの「よりクオリティの高いCMを」「よりインパクトのあるCMを」といった熱い想いがいつの間にか目的化して、オーバークオリティになることが往々にしてあります。“費用対効果”の視点で、“見えないコスト”と“見えるコスト”、それぞれの効率化の方法を見直してみます。
見えないコストを抑える“パートナー化”
“見えないコスト”は、プレゼンテーション、その手直し、社内調整のための代案、オリエンミスによる再プレゼンなどですが、そのほとんどが広告主のための作業です。消費者の”認知“や”興味“には、あまり関係がありません。言い換えれば、制作上の費用対効果はゼロと言えます。企画の段階で広告主の納得がいくまで検討することは大切ですが、効率化する余地は十分あります。
具体的な方法として、広告主とクリエイティブ・チームの“パートナー化”をお勧めします。少なくとも2~3年の一定期間、スタッフを固定・継続。そうすることでお互いの理解を深めながら、広告作業の度、決済プロセスの簡略化&プレゼンテーションの効率化など“見えないコスト”を抑えていく努力を、協力して行っていくのです。
見えるコストを抑える“消費者目線でのメリハリ”
上で見てきたように、“見えるコスト”は、アウトプットを支える部品のようなもので、専門家でないとコストダウンすべきかどうかの判断は難しいものです。コストを抑えるには、“消費者目線”での費用対効果を考えましょう。
具体的には、例えば消費者目線で“メリハリ”をつけること。TV-CMは印象のメディアとも言われ、15秒か30秒という短い映像表現で残せる印象は、決して多くありません。「消費者の認知・興味を高めるためには、どこにお金をかけるべきか?」という視点で、広告主とクリエイティブ・チームとの間で、「ここにはお金をかけるけれど、この部分はコストを抑えて簡略化しましょう。」といった“メリハリ”をつけるための会話がなされるのが理想です。
Tips 広告主と制作者の「目的の共有」が、コストダウンにも近道に!
まとめ
広告クリエイティブは、“常にオーダーメイド”のため、効率アップが難しく費用が高くなりがちです。しかし、CM制作のコストには、“見えないコスト”と“見えるコスト”があり、それぞれ効率化を図る方法が考えられます。基本は、マス広告本来の目的である消費者の「Attention:認知を高めること」と「Interest:興味を喚起すること」への費用対効果を考えること。“見えないコスト”は、クライアント企業とクリエイティブ・チームとのリレーションを高め協働して抑えていきましょう。また、“見えるコスト”を抑えるには、消費者目線でメリハリをつけ、オーバークオリティを防ぐことが有効です。
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